五等分の花嫁:104話感想 これは家族が家族になるための物語。
104話読了。読んでいる最中にも感情が大きく揺さぶられる出来事があったのですが、ちょっと油断して最後に全てを持ってかれてしまいました。そりゃあそうですよね。二週間前に一花が好きな人にキスをしたんだから、そりゃあ二乃だって好きな人にキスしますよね。
理屈だとかそこまでに至る過程とかを考える脳がこの時ばかりは麻痺してしまい、目の前にある二乃のしてやったりな表情をただじっとにやにやしながら見ていることしかできませんでした。この記事を書いている現在はすでに落ち着きを取り戻しておりますのでご安心くださいませ。
という事で104話の感想、行きましょう。
二乃と風太郎、マルオの元へ
前回、日の出祭二日目終了時に店番をしていた二乃の所へ風太郎がバイクに乗って現れ、マルオの所に文句を言いに行くから付いてこいと言う場面で終わりました。
なのですが、二乃はその同行を拒否してしまいます。
風太郎のパパの話から自分と四葉が考えに考え抜いて送った招待状を読んでくれていた事は分かった。それなのに一向にこちらに姿を見せに来てくれないのは、自分達の事なんてどうでもいいと思っているからなんだと。これ以上待つのは嫌だ、こんな事になるなら最初から希望を持たなければ……とその思いを口に出してしまいます。
ですが、そこでひるむ風太郎ではありませんでした。風太郎はマルオからいつも鋭い目を向けられているのですが、その厳しい目つきの裏には『娘達を大切にする』という父親としての思いが確かに含まれているんだという事を二乃に伝えます。
風太郎から依頼を受けていた放送部の椿ちゃんから、マルオが日の出祭二日目に来ていた事を教えられます。いやあ椿ちゃんグッジョブと言わざるを得ません。武田以上に出番を頂いているようで、モブキャラ愛好家達もこれにはニッコリ。
風太郎の証言、映像という動かぬ証拠。これだけの材料が揃ってしまえば、次に二乃が取るべき行動は一つしかありません。弱気になっていた心を叱咤激励し、マルオの元に行く決心を固めて風太郎にバイクで連れていってもらいます。
病院にて
二日目に学校に来たマルオが突如引き返したのは、担当している少年(?)に何か急な出来事が起きてマルオを呼ばざるを得なくなったという事でした。もしかしたら五つ子の誰かが倒れたのかもしれない不安はありましたが、ひとまずは違うという事で一安心です。
少年の状態を確認して院長室(かな?)に戻りますが、そこには入館許可証を持った風太郎と二乃が待ち構えていました。ここで風太郎が「お借りした娘さんを返しに来ました」と言うのは最後の試験で「娘さんを頂いていきます」と言ったことへの対比的な表現だと思われますが、時と場合が違ったら最低最悪の言葉になるので気を付けましょうね?
風太郎は「なぜ娘の前に姿を現さなかったのか」とマルオに質問にぶつけるのですが、当のマルオはそれに全く答える気もなく帰りなさいと言って聞こうともしませんでした。しかし二乃が持ってきた鉄板でパンケーキを焼いてる姿を見て、過去に交わした零奈とのやりとりを思い出します。
それは零奈が入院していた時の頃。もはや長く生き永らえることのできない零奈とマルオとの間で交わされたパンケーキに纏わる世間話。
高校の頃に零奈と会ってから何があったのかは分かりませんが、マルオにとって零奈は恩師だった事、それからマルオが零奈のファンクラブの会長だったという事もわかりました。会長という事はおそらく創設したのもマルオだったと思うのですが、一体何があったらファンクラブというものを『あのマルオが』作る事になるのか、想像もつきませんね。
物語開始当初の風太郎が他人と関わりを持とうとしなかった前例があるのでマルオも同様に学力「だけ」の人間なのかと思っていたんですけど、そこは認識を改める必要がありそうですね。生徒会長もやってたことだし、もしかしたら武田並みに人望もあったのかもしれません。
マルオの前に差し出されたパンケーキ。そこには二乃の「マルオに食べてほしい」という思いだけではなく、入院中の零奈がふとこぼした「小さな娘達の成長」という心残りに対する一つの答えがありました。
自分の未来の選択ができるようになれた、ここまでの成長を。そして未来に向かって一歩一歩確実に進んでいくための、これからの成長を。その全てを父親として、家族として傍で見届けてほしい。そんな二乃の思いが込められていました。
そんな二乃からのパンケーキを受け取るマルオですが、ここで初めてその心の内側が明かされることとなりました。
零奈の死後、マルオは恩師に報いるために娘達を引き取りましたが、その心の奥底では零奈の死を受け止めきれていませんでした。鉄仮面(勇也の言からすれば素の顔かもしれませんが)を被って娘達に接してきていたのは、その部分に触れられるのを意図せず忌避していたからに他なりません。
そして自分が医者で家にいる時間が少ないのも、高級マンションを買って娘達に自分が近くにいなくても何不自由なく生活をさせていたのも、そういった深層心理が自ずと働いていたからなのでしょう。
二乃から差し出されたパンケーキを見て、それに気付かされたマルオ。誰よりも現実を見ていたマルオが『零奈の死』という点において誰よりも現実を見る事ができなかったのが、なんともはや……という思いで一杯でした。
娘の作ったパンケーキは自分の記憶に残っている味と同じだった。それはつまり『零奈の死』という辛い現実に真正面から向き合ってきた証拠と言うに他なりません。あの時に誓った「責任を持って引き受ける」という言葉を真に果たすために、マルオはついに零奈の死を受け入れる事ができました。
そして何よりも二乃が欲しがっていた言葉を伝えます。
ここはもう、『感慨深い』の一言に尽きます。今までの描写の中で娘達を大切に思っている事に関してそれとなく察していましたが、その心の内が読めずにやきもきしてしまう事もありました。それが明かされた上に問題解決までしたので『本当に良かったなあ……』と思わずにいられませんでした。
さらに攻める事を覚えた二乃の――
さて、『ツンデレツン』あたりから表面化してきた二乃とマルオの父娘問題にもある程度決着が付きました。押しても引いてもダメだったマルオにさらに攻めの一手を重ねた結果、問題を解決する事ができました(引いたかどうかはこの際置いておきましょうね)。だとするなら押しても引いてもダメだった風太郎にさらに攻めの一手を重ねていく事は二乃にとって十分『アリ』な選択と言えるでしょう。そう思ったであろう二乃は風太郎にキスをしました。
正直ね、(ま……いっか)と二乃が思っていたあのコマの時点で「あ、これ絶対やる奴や!!」って思いました(笑)。 そして冒頭の感想に繋がっていく……。
そりゃあそうですよね!
躓いてからのキスがスクラン編ラストのキスの状況と似ている事(より正確に言うならこちらはキス未遂に終わりましたが)、そして一度失敗したのをすぐその後でリトライしたのがスクラン編直前の二乃の告白の状況と酷似していた事など、過去との対比が存分に散りばめられていました。ぶっちゃけファンサービス以上の意味はないと思いますが、思わずニヤリとしてしまいましたね。
ざっとした感想はこんなもんなので次に気になった事を色々書いていきます。
気になる事
①零奈先生、めちゃ美人
めちゃ美人。
回想当時の娘達の年齢はおそらく10歳前後でしょう、そこから当時の零奈の年齢を考えると大体35~45歳くらいだと思うんですよね。だけど何というんでしょう。どう考えても20代の顔にしか見えません。零奈先生美人過ぎます。こりゃファンクラブができてもおかしくないっすわ。
それから余談なんですけど、零奈先生って先生としての勤続年数はどれほどあったのでしょうか?今回の話で先生は数年前の話と言っており、『最後の試験』での下田さんの話だとたった1年しか思い出がないそうですが……。
すごい真面目に考察するのであれば、このまま零奈先生が同じ学校に勤めていた場合、マルオがいつかは高校を卒業してしまうじゃないですか。その場合ファンクラブの会長のポジションも辞して次の世代にバトンタッチをするはず(別のとある漫画ではそんな感じでした)なんですけど、ファンクラブの話で零奈はマルオに「初代」とかそういった類の言葉は一切使っていないんですよね。
おそらく考えられることとして一番あり得そうなパターンを挙げるなら、零奈は新卒でマルオ・下田さん・勇也達の通う高校に赴任する事になった。そこで何があったのかは分からないけど、何故かマルオが主導でファンクラブが作られてしまった。しかし何らかの理由が原因で、零奈先生はわずか1年で上中下トリオの高校から去る事になってしまった。
この際教師の職そのものをやめたのかどうかはわかりません。もしかしたら実父と恋仲に落ち、五つ子を身ごもった可能性とかもあるのかな?たった1年で高校を去るというのはよほどの事がない限りありえないでしょうしね。
ただ、おそらくですけど体調を崩したために1年で高校を去った、というのは考えにくいかなと思ってます。五つ子をどこかのタイミングで出産している以上は健康体である事が望ましいわけですし、『7つのさよなら』で五月も零奈が段々体調を崩していったと描写されていましたし。
ただしその場合はマルオが医者になる理由が不明になるんですよね。漫画的には『零奈のために医者になった』って展開もロマンなのですが……。
ここら辺は後に分かる事なのでしょうか?続きに期待しましょう。
②今後の話について
一花回でキスをして続く二乃回でもキスをしたとなれば、当然『残りの姉妹もキスをするのか?』という疑問が出てくることでしょう。それについての自分は『少なくとも三玖と四葉はするのでは?』と予想しています。
単純な話、三玖と四葉は既に風太郎を好いていることがわかっているので何か切欠さえあれば感情が高ぶってキスをしたとしてもおかしくないと思っています。じゃあそのトリガーは一体何か?というのが今後のポイントになるのではないかと。
四葉と五月の話は今回は時間がないので省略しますね。とりあえず次回の中心になる可能性が高そうな三玖に限定して話をします。
三玖がキスするならそのトリガーは何か?という事を考えると、一番は『風太郎からの感謝』かなあ。
— 東王@五等分の花嫁専用 (@428AO) October 6, 2019
デート中に何か任された事をこなして風太郎から感謝されればもう止まらないと思う。任された時も三玖は割と深刻な顔してたし。#五等分の花嫁 pic.twitter.com/HrQjB276fl
一花は自分が半ば諦めているのに対して風太郎が選択肢に入れてくれていたからキスができた。二乃は押しても引いてもダメならさらに攻めればいいことに気付いたからキスができた。
二人の姉がキスをした理由をザックリ言えばこんな感じじゃないでしょうか。そして『三玖はどのような心の動きがあれば風太郎にキスができるようになるのか?』を考えた時に、上のツイッターのような事を考えました。
自己評価の基本的に低い三玖が風太郎から任された事に関して感謝される事で、その自己評価を高めて自分に自信を持ったからキスができた。自己評価が高まったからと言って即キスをする……というのはさすがに安直で考えにくいかもしれないけど、決してありえない話ではありません。
で、風太郎から任された事というのが前回の記事から言っている通り『男女混合でたこ焼き屋とパンケーキ屋の店を営業するよう皆を説得する』という仕事で、その事が原因で初日の四葉の注意を聞いていなかった1組の女子がボヤ騒ぎを起こしてしまう……というのが現状の予想です。
その後の展開まで一気に考えると大体次のような感じになるのではないでしょうか?
ボヤ騒ぎの間接的な原因になって『やってしまった……』と三玖が落ち込んでしまうけど、クラスが仲良くなるように提案してくれた事やそもそも初日の功労者だった事もあってクラスメイトの皆から逆に感謝される事になり、3年1組は一致団結して日の出祭最終日へ臨む。
そしてクラスの仲を良くしたいと思って三玖に頼んだ風太郎もその光景を見て満足し、三玖に感謝する。感謝された三玖は思い余って風太郎にキスを――!
いや、合ってるのかこれ!?
「三玖は幾つもの壁を越えてきたのでもう失敗をしないだろう」というメタを完全に取り除き、あの例の『火のコマ』が屋台のボヤ騒ぎの1シーンを切り取ったものだと想定した場合に三玖がキスをするようになる過程ってこれくらいしかないのでは……というのが今の自分の考えですかね。
あとはこれまでの記事で何度も言っている通り、上杉母・パン屋さん・三玖の間で上杉家のパンの味が伝承されていくロマンストーリーが展開されてくれることも願います!!
③倒れた姉妹は誰か?
今週も倒れた妹が誰なのかは描写されませんでしたね。ただ、今回の時点でほぼ『倒れたのは五月』だと決め打ちしてもいいのかな?と思う根拠が出てきたのでそれについて言及してみましょう。
今回でマルオが病院に戻った理由は入院していた少年から呼び出しがあったためという事がわかりました。おそらくこの時点では妹組の誰かはまだ倒れていないものと思われます。
また、風太郎と二乃が入館許可証をもって院長室でずっと待っていた事から、マルオが学校を去ってから二乃達が病院に来るまでの間にも誰かが運ばれてくることはなかったでしょう。もしもこの時点で誰かが倒れた場合、間違いなく二乃にも連絡が入るはずです。それにも関わらず、院長室でマルオとその話を一度もしなかったのはつまりそういう事だと思います。
以上の事から『学園祭の最中に過労や思わぬ転倒で救急車に運ばれる』という可能性がほぼ消えてなくなったと思います。なので過労で倒れる予想が多い三玖や四葉は候補から外され、消去法で五月が倒れたのではないかと推測しました。
「妹さんが倒れたそうだ」という言葉のインパクトに騙されがちなのですが、例えば五月が実父と出会った衝撃でめまいや貧血を起こして救急車に運ばれたとしても、その話を聞いた織田社長が拡大解釈して「妹が倒れた」と表現するのは特段おかしい事でもないでしょう。
以上が五月が倒れたのではないか、という理由です。
ついでにもう一つ言うのであれば、一花は思い出の公園で、二乃はバイクでの告白など、過去のシーンを彷彿とさせる場所や状況が今回の『最後の祭り』編でマッチしていました。過去に風太郎が入院している時に五月と会話していたので、今回の『最後の祭り』五月編では逆に五月が病院のベッドで横になっているのでは……という予想も十分考えられます。
あとさりげなく重要な事なのですが、今回の話でマルオが零奈の死に向き合う事が出来ました。もしかしたらまだ母の死を直視できていないであろう五月にマルオが親として何か言う展開もこの先待っているのかもしれません。そもそも五月は零奈と同じで普段から敬語を使っているし、下田さん曰く「先生にクリソツ」なので……。マルオがそこについても何かしら言及する事があるのかも?
まとめ
ずいぶん取っ散らかった文章になりましたが、今回は一花回に引けを取らず盛り上がりを見せてくれた素晴らしき二乃回だったと言えるでしょう。マルオとの和解もさることながら、二乃の攻めの強さにはある種シビれるものがありました。やっぱり二乃はこうでなくちゃね!
さて、もはや留まるところを知らない『最後の祭り編』も五分の二が終わりました。しかもその後には未だに詳細の語られない『日の出祭三日目』も待ち構えていることでしょう。長い。本当に長い。
三玖、四葉、五月。三人のエピソードを終え、そして最終日も終わった先、風太郎が出す一つの『答え』に我々読者は果たして辿り着くことができるのか……?
次回以降の展開に関して色んな推測・憶測が飛び交っていますが、すべてはねぎ先生の言葉のまま。様々な不安と期待を楽しみに変えつつ、今回はこの辺で終わろうと思います。
ご拝読ありがとうございました。
*本記事で掲載している画像は©春場ねぎ・講談社/「五等分の花嫁」より引用しています。