五等分の花嫁:105話感想 皆の思い出に残る学園祭を過ごしたくて……
105話、読了しました。局所局所で盛り上がりを見せている『最後の祭り編』も折り返し地点に到達し、いよいよ3人目の姉妹にフォーカスが当たります。一花回・二乃回と長女から順番にメインを張っていくように物語が進行されましたが、今回もその例に漏れず三女の三玖が中心人物として描かれました。
物語開始当初から引っ込み思案で根暗で自分に自信がない人間として描かれてきた三玖。しかし風太郎との出会いから様々な出来事を経験して、今では好きな人に告白できるくらい前向きになれました。そんな彼女が今回の学園祭で一体どのような思いを持ち、どのような動きを見せていく事になるのか、それをつぶさに追っていきたいと思います。
最終日の三玖
さて今回も一花・二乃の時と同様に、三日目後夜祭の終了を告げるアナウンスと、やはりアンニュイな表情を見せる三玖の姿がそこにありました。『二乃の場合①』の時の記事で『人事を尽くして天命を待つような表情をしてるのかな』とどうでもよさげに予想していましたが、全くそんな事はありませんでしたね。
さて、三玖が立っているのはどこかの廊下です。右手をあてて窓の向こうをじっと見つめていますが、その視線の先には一体何があるのでしょうか。こちらに歩いてくる風太郎の姿を探しているのか、それとも別の何かなのか?そしてその反対側にある扉を開けたら教壇に二乃が立っているのでしょうか。その教室のベランダに一花がいるのでしょうか。
姉妹が同じ教室に招集させられているのか、そうでないのか?三玖回をもってしても全く分かりませんでしたね。これは5人目になっても分からないままかなあ……?とりあえず二乃回でのちょっとした予想を続けるなら、四葉は教室の後ろ側、五月は自分の席ですね!
前日夜?の三玖
学園祭を間近に控えたとある夜の事。初日が担当となっている三玖は夜遅くまでずっとパンケーキを焼く練習をしていました。どうやら母や姉の作るパンケ-キのように上手くいかないのが原因で、何度も練習をしていたそうです。お皿に乗せられていく失敗品の数々が努力の跡を匂わせるのですが……。
いやこれ一晩で成長しすぎじゃないですか?
いやはや、これは本当にすごいですね。最初はまるで真っ黒こげで石炭のようなパンケーキなのに、だんだんと形もまともになっていき、しまいには学園祭初日で皆に絶賛されるパンケーキになってるんですよ?はぐれメタルでも乱獲してんのか!?ってくらいそれぞれの出来に差がありますね。これには一晩でどうにかする事に定評のあるジェバンニも思わず目を見張ってしまうでしょう。
でだ、五月。夜遅くまで恐らく勉強していたのは偉い。練習中の姉のために味見をするのも偉い。偉いんだけど、太るぞ。
さて、冗談はここまでにしておいて……頑張っている姿の三玖を見て五月はなぜそんなに頑張るのか、その理由を問います。
一つは、三玖の中に『将来調理師になりたい』という強い思いがあるから。もう一つは『学園祭で買ってくれる皆に喜んでもらいたい』から。でもそれらは一番の答えではないでしょうし、質問をした五月もそれだけの事だとは到底思っていないことでしょう。
これに関しての推測は後述します。
初日の三玖
自宅でも必死に頑張って練習した成果が出たのかパンケーキの味も好評で、売れ行きはとても好調なようでした。クラスの女子からも大いに褒められ、三玖も満更ではなさそうな表情が実にいいですね。
そんな中、クラスの男子が敵情視察に来ていました。それを発見した女子が対抗意識を強く燃やして三玖を鼓舞したのですが、当の三玖はというと『男女が競い合うこと』よりも『男女が仲直りする事』に意識が向いていました。
三玖のこういう言い方(実際は言っていませんが)、21話『おまじない』での一緒に勉強しない二乃と五月を見かねて言い放った四葉の姿をふと思い出しますね。
やっぱり五つ子ですな。
さて、そんなような事を他の女子に言えない三玖の雰囲気を感じ取り、他人の心理を読む事が上手な松井さん(自社調べ)がズバリ三玖の心理を言い当てました。
違う!確かに合ってるけど絶妙に違う!!
松井さん、もう既に自分に前田という彼氏がいるからって他人の恋愛模様を心の底から楽しんでやがる。そんなん修学旅行でやれ!もう終わったけど!
三玖の思いは
そんなツッコミをいれますが、三玖としてはその恋に関してもはや『達観』している様子でした。なんせ一花の(私でなくてもいい……これで区切りが付けられるんだ)っていう半ば『諦観』の混じった心情吐露を超えてハッキリと(この恋の成就が不可能だって私は知ってる)と思っていますからね。
恐らく今回で一番の衝撃ポイントになる点だと思われますが、これに関しては三玖は『風太郎は一花が好き』だと思っているのではないか?と自分は推測しています。
そのきっかけはおそらく94話『分枝の時①』にまで遡ります。一花の退学を知って風太郎が説得する場面ですね。この時の風太郎は『卒業までの残り僅かな時間、今でしかできないことを皆としたい』という気持ちを持っており、一花の退学を必死に止めようとしました。
その最中に「一対一の個人指導をすれば卒業できる」と提案していましたが、そのやりとりを間近で見ていた三玖は果たしてどんな気持ちを持ったのでしょうか?
それから風太郎がパン屋のバイトをしている時に、三玖はなぜ一花を引き留めようとするのかを風太郎に尋ねました。もしかしたらこの時には既に「風太郎は一花の事を好いてるのではないか?」と内心思っていたのかもしれません。少なくとも花火大会の時の「どうしてそこまでお節介焼いてくれるの?」と言った一花の言葉とは意味が大きく異なるのは何となく察することができると思います。
もちろん風太郎としては『一花が好きだから』ではなく『一花には恩返しがしたいし、一花とも一緒に楽しい時間を過ごしたいから』という意識だったと思うし、事実三玖にそう告げたでしょう。
だけど「風太郎は一花の事が好きなのでは?」と疑問に思って質問したんだとしたら、風太郎の答えを聞いて「やっぱりそうなんだ」とその認識を強くしてしまう事は十分あり得ます。特に『普段誰かに感謝する事があまりない風太郎が感謝していて、その姿を間近で見る』という部分は大きいのではないでしょうか?
あとはちょっとした余談レベルですが、織田プロダクションでの説得でも『一花に感謝している事を恥ずかしくて伝えられなかった風太郎の姿』を目の前で見ています。思いっきり相棒ポジションで一花の説得に協力していた三玖ですが、その胸中はどんな感じだったんでしょうね。
その後、三玖は学園祭の一週間前というタイミングで風太郎を水族館デートに誘います。自分の夢に向かって進んでいきたい事をハッキリ伝えるためだけではなく、風太郎に告白してその返事を待つために。
そもそも三玖がこういう事を「学園祭前に話しておきたい」と言ったのは、一花も知っている通り学園祭の三日間でカップルが成立する事が多いという噂話を知っていたからで、三玖としてはそこでケリを付けたかったのではないでしょうか。もしも風太郎の気持ちが決まっているのなら、ここでハッキリと白黒をつけてほしいと。
ただし学園祭直前日までは「もしかしたら?」というあくまで『疑惑』程度の感情だったのでしょうが、その夜に三玖は一生懸命にパンケーキを練習する事でその『疑惑』が『確信』になってしまったのでしょう。夜の五月の質問への答えとしては、
自分が一生懸命パンケーキを焼く練習をするのは、大好きな風太郎に食べてもらいたいため
……という感じになるのでしょうが、その構図がそのまま風太郎にも当てはまり、
一花の退学騒動の時に風太郎が一生懸命バイトをしていたのは、好きな一花に辞めてほしくないため
……と三玖が早とちりして思ってしまったんじゃないか、というのが自分の印象でした。
勇気を出して
男子との和解を望むべく、敵情視察と称してたこ焼きチームの本丸へと乗り込む三玖。しかし女子が女子なら男子も男子という感じで対抗心をバリバリに燃やしている様子。風太郎は自分が説得しても逆効果になりかねない事を危惧し、直感で三玖に和解の可能性を託しました。
自分の直感を信じるのか信じないのかは三玖次第とはいえ、それでもこの状況を変えられるのは自分ではなく三玖だと風太郎は言ってくれました。かつて自信のなかった三玖ならそれでもできなかった事だろうけど、今は違います。『風太郎が好きな自分』を肯定できる強さを持った三玖は自分を信じて、そして自分を信じてくれている風太郎の言葉を信じて行動に出ました。正直ややこしい。
このコマを見た瞬間に「ハチミツください」を思い出してしまったのは明らかにモンスターハンターのやりすぎですね。
たこ焼き陣営に顔を出した途端に野次馬的な対応をさせられた三玖ですが、それでも意を決してたこ焼きを一つ注文します。
大体どういう時でも同じような流れになると思いますが、仲違いや喧嘩をしている相手と関係を戻す場合に『相手を肯定する事』っていうのはかなり重要な事だよなあ……と、いつも思わされますね。
そして注文を聞いた前田が三玖に謝るシーンになるのですが、正直言って「前田かっけえ……」ってなりますよね。実際のところ前田は前田で一花を呼び出す理由を偽っていたので騙すことに関してはお互い様(一応フォローするなら前田は直後に嘘だと言っている)なのですが、それでも一花から話を聞いて『自分の恋愛感情を弄ばれた!』と憤慨するどころか自分の非を認めて当時の三玖に申し訳なかったと相手を慮れるまでに至っていますから。
相手の良いところを見つけて肯定し合う和解の仕方も素晴らしいですが、こうして自分の非を認め合う和解の仕方も中々見てていいものです。自分の非ってどうしても認めにくい、認めたくない心理が働くものですからね。それを超えてこの二人が「ごめん」と言い合えたのは地味ながら素晴らしい事だと思います。
前田から差し出されたたこ焼きを食べる三玖。少し前に四葉も試食をしますが、食べ方や反応に多少の差はあれど、その感想を述べさせれば一字一句の間違いもなし。2.5文字しかねーじゃねーか!というツッコミはナシで。三玖の言葉がお世辞でなかったのがわかった男子はたこ焼きの美味しさの秘密を暴露します。
そして絶品のたこ焼きを1組の女子にも食べさせてほしいとお願いをする三玖。お互い意固地になってしまっている部分はあるけど根底にある思いは同じはずだと信じ、卒業後に振り返った時にいい学園祭だったと懐かしめるものにしようと伝えます。
その言葉を聞いた男子達の間に動揺が走りますが、お手洗いから戻ってきた武田が一言、
そういえば前田君は松井さんに食べさせてあげてたよね
というこの上なく素晴らしいアシストを放ってきました。これを聞いた男子は自分も食べさせてあげたい女子がいると前田にキレまくります。
もはや収拾のつかなくなったたこ焼きチームの陣営でしたが、ついに三玖に女子達を連れてきてもらうようお願いをする事になりました。こちらの陣営に来てから難しそうな顔しかしていなかった三玖でしたが、この言葉を聞き、ようやく和解への道が見えた事で一気に表情が明るくなりました。
1組の問題が解決したのを見終えて、風太郎は自分の仕事に戻る事を三玖に伝えます。去り際に三玖はお礼を言いますが、当の風太郎は今回男子達の心を動かしたのは全て三玖のおかげであり、「強くなったな」と成長した三玖を誉めます。
その言葉を聞いて風太郎が去った後、今までの自分では到底成し遂げられなかっただろう問題を自分の力で解決に導けたことが嬉しくて思わずガッツポーズをする三玖の姿がそこにありました。
火に包まれた屋台
このままいけばクラスの問題も無事に解決できそう。そんな事を考えながら女子グループを連れて来た三玖を待ち構えていたのは、 消火作業に追われている男子達の姿と燃え上がるたこ焼き屋の屋台でした。
理由は恐らく、美味しさの秘訣を説明している最中に出てきた『改造コンロ』でしょうね。いやね、生まれてこの方たこ焼きを作ったことが一度もないので「そもそもコンロが改造できるのか?」とか「どうやったら他のものに火が飛び移るのか?」とかが実はイマイチわかってないのでこれ以上書きようがないのが事実なのが実に厳しい(笑)
実は『第三者による放火なんじゃないか説』も考えたんですけど、それは完全に犯罪であって学園祭を続行させるわけにはいかないのですぐに取り下げました(笑)
理由や被害の少なさなどは関係なく、問題が起こってしまったとあっては学園側も対処をしなければなりません。3年1組のたこ焼き屋は二日目以降の出店停止処分を言い渡されてしまいました。
燃え盛る屋台を前にどうすればいいのかと逡巡する三玖。せっかくクラスの皆が和解できるように勇気を振り絞ったものの、想定外のトラブルに何もできず立ち尽くしてしまいます。
果たしてこの騒動に解決は見えるのか?といった締まりで今回は終わりです。
100話終盤の例のコマで予想されていた通り、ついにボヤ騒ぎが起こってしまいましたね。個人的にはボヤ騒ぎであってほしくなかったですが、メタ読みによる推測&願望でしかなかったものなので起こってしまったものはしょうがない。ここからは考えを改めていきましょう。
気になる事
途中で考察をいくつか挟みましたが、他の件で気になった事をいくつか述べていこうかと思います。
①三玖は何故クラスを和解させようとした?
率直に言えば『いきなり感』がありました。97話『変わり始める日常』で男女の対立に対して困惑している様子は確認できていたのですが、『どうにかしなきゃ!』みたいな使命感?みたいなものは感じられなかったんですよね。
前回の記事で『水族館デートの最中、風太郎が男女間の和解を三玖に頼む』という考察をしたのですが、今回の風太郎と三玖の言葉を聞く限りそのようなやりとりがあったとは言い難く、『和解に関してはたまたま風太郎と三玖の考えが一致していた事によるもの』という見方が強いと思っています。
そもそもこの件を三玖に任せていると言ったなら、今回で改めて「この状況を変えられるとしたらお前だ」というのは少々文脈に合わないので、任せたのは別件だったという事なのでしょう。
それから少し考えて思い出したのですが、そもそも今回の男女の対立に似たような構図が中野家の五つ子の間でもあったじゃないですか。修学旅行で。
おそらくあの経験があったから、学園祭での男女の意識の根本は同じはずだと思ったのでしょう。そして仲直りをさせないときっと後悔する(=皆で喜べる学園祭を過ごせなくなる)事も見えていたからこそ、自分の意識で男女の対立を和解させようと頑張っていたんだと思います。
②今後の展開について
正直な話、「どうするんだよこの状況……」と言うのが率直な感想。二日目の三玖の様子を見ると既に問題が解決しているような素振りも見られるのですが……。
どうなんでしょうね、一緒に回りたいというよりも男女の和解に関する相談をしたい感じなのでしょうか。
あとは一花・二乃同様に風太郎にキスをするのか?そしてパン屋さんと上杉母との話はするのか?などなど、色々気になる案件が残っているのでこれらをどのようにまとめていくのかが気になります。
ただ今回での男女の対立が修学旅行でのシスターズウォーをなぞらえているとするなら、あの時風太郎を前にして二度も逃げてしまった三玖が今回のトラブルから逃げずに向き合い、自分の力でクラスの男女を完全に和解させられるようになってほしいと願う所ですね。
今回の話の最後にうずくまってしまう三玖の姿がありました。風太郎に頼ってばかりではダメだと、自分でもできる限りの事はやらないといけないんだという決意を胸に、初日の夕方から1組全員集合させて夜までに問題解決ができるよう三玖の活躍を願いたいですね。
③風太郎の謎の傷痕について
一花ですね。『一花の場合②』の感想でも述べたのですが、「誰も選ばない」と言った風太郎に対して一花が思わずビンタしたんだと思います。
仕事の撮影で役者さんが「やり慣れてない……?」と言っていた事と、一花が風太郎に「誰も選ばないなんて言わないで」と言った後右手を思わず口元に持っていって「あっ……」みたいな表情をしている事から、一花がビンタをしたとみていいと思います。
これを見ると、屋台のボヤ騒ぎは一花を送り届けてから発生したものと考える事ができます。ボヤ騒ぎが17時10分に起こっているのが時計で分かりますので、それより前の時間帯に一花は学校を離れていますね。
「バタバタしてるとこごめんね」と言っているので、風太郎が告白してからここまでの間にボヤ騒ぎ以外で何かがあったという事でしょうか?
告白後にあった事として、二乃と風太郎が一緒にマルオを探して勇也と合流したの事が挙げられます。しかしそれをバタバタしてるかと言われるとちょっとバタバタしていないような感じにも見えるので、きっと別の何かがあったのかと思われるのですが、果たして真相やいかに。
まとめ
二乃以上に落としどころの見えてこない三玖回でした。ボヤ騒ぎの騒動は初日で決着が付くのか、はたまた二日目に決着が付くのか?そしてどういう流れでキスをする事になるのか?もしくはならないのか?何もかもが予想が付きません。
ただ一つ、三玖の成長物語ももう最終章と言ってもいいでしょう。勇気を出して行動を起こせば、不可能はきっと可能になる。その事を今回実感した三玖が男女の件でさらに積極的に解決へと導き、そして風太郎に対する達観じみた恋愛感情に対しても勇気を出してぶち破り、自分のしたいことをしてほしいものです。
次回の更新まで24時間を切ってしまいましたが、今回はこの辺で終わろうと思います。
ご拝読ありがとうございました。
*本記事で掲載している画像は©春場ねぎ・講談社/「五等分の花嫁」より引用しています。