五等分の花嫁:102話感想 『嬉しかった?』
102話、読了しました。絶句?呆然?何と言えばいいのでしょうか、語るべき言葉を奪われてしまい、この気持ちにふさわしい言葉が出てきません。正直言ってこんな感じでした。
花嫁が誰なのかを考えながら読んでいくのがこの作品流の読み方になると思いますが、今回はその事をすっかり忘れてしまうほどの大きな衝撃に包まれました。意を決した人間の思いの強さがどれほど刺激的で魅力的で、どれほど美しいものなのかというのをこれでもかというほどに思い知らされた気分です。
世界の一花推しの方々の中にはおそらく感情の荒波に襲われて限界点を突破してしまった方も大勢いるものと思われますが、そうなるのも頷けるくらい今回のお話は綺麗な物語でした。
ということで本題。今回も前回に引き続き、一花を中心としたお話が展開されました。キスの話と、自分の気持ちに区切りを付けたくて一足先に答えを得ようとした一花に告げられた「誰も選ばない」という風太郎の宣告。その二つの話が交差する運命の時、初めてできた風太郎との思い出の場所で一花が導き出した答えとは一体何だったのか。振り返っていきましょう。
一花の演技と倒れた妹
のっけから一花の渾身のビンタが炸裂。これは「誰も選ばない」と言った風太郎に対して言ったのではなく、二日目の撮影での1シーンでのセリフであることが直後のコマでわかります。
しかしビンタされた俳優の方が「やり慣れてない……?」と言ってるので、あの後で風太郎にも思いっきりビンタをかました可能性は十分ありますね。後に風太郎と夜道を歩く場面でも右手を口元に持っていく描写がありましたので、やっぱりぶちかましたんでしょうか?
一通りの撮影が終わってホテルに戻ろうとする一花に、カツラをかぶるレベルで髪の毛がふさふさに生えているだけでは飽き足らず七三分けにして決め散らかしている織田社長から「妹さんが倒れたそうだ」と連絡が入ります。学園祭の二日目だったよねと確認していた事から、おそらくその最中に倒れたのかな?
もう夜も遅いとはいえど電話だけでは心配だったので直接病院に訪れた一花でしたが、倒れた妹は大事にはならず元気も戻ってきているようで一安心。途中で風太郎と二乃とも合流しますが……
地味に気になる発言でした。倒れた妹は一応は元気な様子ではあるので、一花のように安堵しているのであれば『一旦』落ち着いたという表現は少々妙な気がします。それって裏を返せばもしかしたらまた落ち着かなくなる可能性も出てくるって事ですよね。
つまり倒れた妹とは別に、理由は分かりませんが取り乱した妹もいるのでは?と推測しています。で、取り乱した妹は倒れた姉妹の原因に心当たりがあって、もしくは倒れた姉妹とは別で何らかの要因があって落ち着かなくなってしまっているのでしょうか?ここら辺は今後の話のカギになってきそうな予感がビシバシと伝わってきますね。
ひとまず『誰が倒れたのか?』という問いでダントツで考えられるのは四葉ですよね。シンプルに『過労で倒れてしまった』という理由です。
二日目は風太郎は学級長としての仕事はお休みで、今ある仕事は他の学級長が全部やるとの事でしたので四葉が本来風太郎のやるべき事までやっている可能性は高いと思われます。事実、二日目の四葉はずっと学園祭の仕事に追われているようでした。
思い返せば風太郎がいきなりお休みをもらえたのも割と謎でしたね。風太郎も言っている通り「昨日はあんなに忙しかった」のですから。事前に学級長の集まりで各日程の役割分担を組んでいたならお休みがもらえるのも分かりますが、この突然休憩所を作りたがってた無計画な女との会話を聞く限りそのような分担もなさそうです。
もしかしたら、風太郎が答えを考える時間をじっくり与えるために四葉が風太郎の分も率先してやる事を引き受けた可能性なども一応考えられるでしょうか。そして本来予定にない仕事を一手に引き受けた結果無理がたたってしまい、倒れてしまったのかもしれません。
その意図がなくても、演劇部の部長から二日目以降の劇の相談を持ちかけられた事もあります。そして二日目に竹林登場というイレギュラーもあったため、余計な事を考えないようにたくさん仕事を引き受けた、あるいは不安定な精神状態のまま仕事をしていたら普段やらないようなミスをして倒れてしまったというのは考えられます。
四葉に関してはこのくらいでしょうか。そして次に倒れる可能性があるとしたら五月なのではないかと推測しています。働く描写のない五月は過労で倒れるようなイメージがほぼほぼないので別方面から探っていく事になるのですが……。
これは自信がないので聞き流して頂いて全然構わないのですが、漫画の登場人物が何らかの原因で昔の記憶がフラッシュバックされ、『過去のトラウマ』が蘇って気絶してしまうような描写を目にしたことはありませんか?それがもしかしたら五月にあるのではないか?というのが自分の推測です。
実父の関係で何かしら辛い過去があったとしたら、実父と会った瞬間にその記憶を真っ先に思い出してしまうのではないか……という具合に一応考えています。
四葉と五月に関しては上記の通りですが、とりあえず三玖に関しては倒れていないと断言してもいいかなと思います。三玖は二日目は風太郎と一緒に回ろうとしていたのもあって仕事がなさそうでしたから。
それに三玖はこれまでの話で体力不足がたびたび描写されていましたが、学園祭初日に数人でパンケーキ屋を完売まで回し続けた実績がありますからね。追加分もある上で完売したので、自分のお店で働く分には過労の可能性はないと見ていいんじゃないでしょうか。
さらにもっと言うと、三玖が疲れた顔をしている時は非常に分かりやすいです。近くにクラスメートがいるならまず間違いなく気付いて三玖を休ませてくれる事でしょう。風太郎が海で楽しんでいたのを見抜いた観察眼の鋭いあの松井さんが近くにいてくれるならなおさらです。
最後におまけでもう一つ。これは漫画メタですが、三玖はこの『五等分の花嫁』という作品の登場人物の中で最も成長を遂げているキャラクターになっていますので、これ以上は三玖を中心にしたトラブルはもう起こらないだろうと踏んでいます。
なので同じ理由で『取り乱した妹』も三玖ではないと思いたい。
逆に取り乱した妹は上述した件で五月がそれにあたるのかなと思ってます。読者が実父実父言ってるだけで実は実父が無関係である可能性も当然ありますが、勇也達の話から存在を匂わせてはいるのでねぎ先生から否定されるまでは追っていきたいと思います。
夜道を歩く花と風
二乃と別れ、一花と夜道を歩くことになった風太郎。その場所はかつて人だかりのできていた花火大会の会場でした。学園祭の会話を重ねていく中で、一花は風太郎の感情面にアプローチをしていきます。
風太郎は硬派に見えるけど旅行の時には大はしゃぎするし、叫べる場所に出てくればヤッホーと大声で叫ぶ。勉強星人となった今でも人並みに素直な気持ちを持ち合わせて行動していることを指摘し、「誰も選ばないなんて言わないで」と伝えます。
風太郎自身が全員に「この六人でずっと、このままの関係でいられたらと願ってる」と言ったのは、かつて一花も思っていた事でした。だけど、もう区切りを付けなければならない段階にまで関係性が深くなっているのもまた事実。心の整理がついていない状態の風太郎に、一花は単純な問いを投げかけました。
『キスをしたのが誰だったら嬉しいか――』
ある種この作品の『核』にあたる質問ですよね。『誰がキスしたのか?』については他の方々の考察・感想ブログやツイッターなどで盛んに議論されていますが、こうした『風太郎の気持ちを軸とした考察』は最近風太郎が5人に告白するまでは中々お目にかかれていなかったですし、僕自身も当然そういう考察をしていませんでした。
「なーんて」と言ってその質問を取り下げたように見えましたが、一花はさらに風太郎に畳みかけていきます。それが自動販売機での問いになるわけですね。
五月の好きな飲み物はカレーだと単行本のキャラクター紹介にも書かれていますが、この場ではさすがに無理がありましたね(笑)。描写こそなかったものの、家では一花同様にコーヒーを飲んでいるのかもしれません。
10分以上悩んで風太郎は何らかの答えを出しましたが、その間ずっと待ちぼうけを食らっていた一花は仕事の疲れからか眠りこけてしまいます。ずっと悩んでいる姿を見せていたのもあって「ダセぇとこを見せちまった」と独り言ちる風太郎でしたが、一花との思い出は「いつもこんな感じだった」と振り返り、「お互い苦労したな」と眠っている一花に語り掛けます。
前日、泣きそうな迷子のショー君を前に『お姉ちゃん』としての一面を見せた一花に対して『お兄ちゃん』としての一面を見せられなかった風太郎。「誰も選ばない」と告げたその心の内を見透かされて一花に「素直な気持ちを大切にしなよ」と教えられた風太郎。それだけではありません。中間試験前の泊まり込みの時や林間学校の二日目で、他姉妹の接し方について悩んでいる風太郎に助言をくれたのもいつだって一花でした。
『似たもの同士』とは風太郎と五月の意地っ張りな性格がそっくりだという意味で使われていましたが、風太郎と一花の間にも『長男・長女として立場が似通っている者同士』の関係性が成り立っていました。風太郎がそこにある種のシンパシーを感じ、普段の一花ではなく眠っている一花に自身の心情を吐露したのが実に深いと思わざるを得ませんでしたね。
初めての――
風太郎は眠っている一花の唇をじっと見つめます。脳内に呼び起こされるキス五月の無言の表情、一花の問いかけ。もしかしたら、風太郎とキスをしたのは……と言ったところで一花が目を覚まし、風太郎が唇を見ていた理由を尋ねました。
おそらく一花は驚いたでしょう。風太郎がキス五月の正体が一花である可能性を全く捨てていなかった事と分かったからです。
「誰なら嬉しかった?」という質問の時も、自販機での問いかけの時もそうでした。一花は二度にわたって自分を選択肢の中に入れていませんでした。それは初日に「変な期待」をしつつも、一花の中には「私じゃなくていい」「この気持ちに区切りが付けられるんだ」と、風太郎との恋愛に対して半ば諦観もあったからだと思います。
しかし、風太郎が自分の可能性も探してくれている事がわかったその瞬間、一花の中にある諦観という名の感情の蓋は取り除かれました。それまでずっと抑えつけていた風太郎への感情はもはや溢れかえる勢いでいっぱいです。もうこの気持ちを止められる術はありません。一花は自分の持っていた素直な気持ちをキスという単純にして最強の形で風太郎に伝えました。
もうね、ここから後の一花はもう『ずるい女』の連続でした。
キスをして、普段の大人びた一花と打って変わって恋する乙女の表情をしながら「私だった?」と尋ねるんですよ。鐘キスをしたのかしていないのかなんて自分自身が一番よく分かっているハズなのに!
自分の感情を悟らせないばかりか男の人とキスするのは風太郎が初めてだからって「嬉しかった?」って聞いてきたんですよ。半ば諦めかけていた可能性を拾い上げてくれて自分の方がとことん嬉しかったハズなのに!!
花火大会の思い出の地でもある公園を燦然と照らす満月をバックに、一花の魅力を全て凝縮したようなこの表情。至高の一枚でした。
気になること
感想としてはそんなところでしたので、あとはちょくちょく気になったのを考えてみましょう。
①風太郎と二乃が病院に来た事について
自販機で悩んでいた時間が22時30分を超えていたので、そこから逆算して軽く見積もっても21時は過ぎているでしょうか。そんな時間にこの二人が病院に来た理由って何でしょうね。それによく見たら二乃は制服の上にエプロンを着用しています。竹林と遭遇する時はエプロンは着ていませんでしたが、あの後自分の仕事に戻ったという事でしょうか。
五月が「たこ焼き屋さんの方は大丈夫ですか?」と質問してるので本来二乃は二日目にたこ焼き屋のシフトが入っていたんだけど、何かがあってそれどころじゃなかったのでしょう。それが風太郎の告白だけなのか、他にも何かあったのかは不明ですが。
妹が倒れた時、同じく学園祭に来ていたマルオの指示で病院に運ばれる事が決まり、マルオが倒れた妹に付き添った。そして二乃が自分の仕事を片付けようとしたら今度は別の妹に何か落ち着かなくなるようなドラブルが発生し、その対処に追われてしまった。それも一段落ついて、取り乱した妹を倒れてないし取り乱してもない妹に任せてから倒れた妹の様子を見に病院に行ったら駆け付けてきた姉と遭遇した、という具合でしょうか?
ややこしいわ!!
風太郎が一緒にいる理由は至極単純で、女の子に暗い夜道を一人で歩かせるわけにはいかないから。そこらへんは勇也の教育の賜物ですね。
②風太郎は何を言おうとしたのか?
一花が話の主導権を握ってしまったため分かりにくいですが、ここで風太郎は何を一花に話そうとしたのでしょうか。直前に明日の仕事の事を聞いていたので、とりあえず明日は学校に来てほしい、とかそんな感じなのかな?
③三日目の後夜祭には何があるのか?
「特にすごい」「あんなこと」と言ってるので『全校生徒・全参加者の前で愛の告白をする時間があり、風太郎もそれに参加して誰かに盛大に告白する』とかどうでしょう?
— 東王@五等分の花嫁専用 (@428AO) September 17, 2019
「待たせたな」と言うのは後夜祭終了後の事だし、今から告白ではなくて実はもう告白をした後なのかもしれない。#五等分の花嫁 pic.twitter.com/Rrqfreqgds
自分がいた学校の文化祭では、最終日に男子が全校生徒の前で好きな女子に告白をする謎の告白大会がありました。ねぎ先生も自分と同じ愛知県出身なので、もしかしたら同じ経験をした可能性があるのかもしれませんが、果たして。
学園祭の話が出てきた頃は四葉が全校生徒の前で風太郎に告白する予想を立てていましたが、今となっては逆ですね。風太郎が告白するのではないかと思ってます。
ただし100話でキャンプファイヤーの描写がありましたので、林間学校の時と似たような何らかの伝説(多分伝説とかいう大層なモノではなく、ジンクスか何かの類でしょう)があるんじゃないか?というのもありますので、「最終日に踊ったカップルは~~」というパターンも一応予想しておきましょう。全校生徒の前での告白に比べればインパクトは足りないですが、「三日間でカップルがたくさんできる」という話が真実なら十分ありえる話です。
④竹林じゃね?
竹林じゃね?
それはそうと、このドラマのこのキスシーンを見たというショー君がどんな感想を抱いたのか是非とも聞いてみたいですよね。百合カップルに目覚めてしまうのかどうか。というか何見せてんねんショー君のお母さん!!
以上、気になる点でした。
まとめ
『風太郎が誰を選ぶか関係ない、一番大切なのは自分がどうしたいのか?』そこに気付かされて風太郎に告白という名のキスをするという流れがとにかく最高で、五等分の花嫁の中でも屈指の一花回でした。のっけから『最後の祭り編』のシリーズ最高潮に達したと言っても過言ではない今回の話ですが、仮に一花の最終日が描かれるにしても『今回味わった感動を上回ることができるのか……?』という不安さえ生まれてきてしまいますよね。
それとも三日目は風太郎の視点だけで話が進むのでしょうか。となると次の回は別の姉妹に変わるわけですが、考えられるとしたら二乃なのかなと。病院のシーンではバトンタッチの意味も含めて二乃が出てきたのではないかとも一応推測していますので。
いやあ、この程度の予想くらいは合っててほしいものですね(笑) と言った具合で今回はこの辺で終わろうと思います。続きは次回。
ご拝読ありがとうございました。
*本記事で掲載している画像は©春場ねぎ・講談社/「五等分の花嫁」より引用しています。