五等分の花嫁:111話感想 中野家と中野五月のRe:スタート
111話を読み終わりました。今回の五月の見開き絵は過去最高と言っても過言ではないレベルの破壊力があり、読了後も1時間近く言葉が出てきませんでした。あの絵はいつ見ても、何度見ても見惚れてしまうくらい素晴らしいです。複製原稿が出たら真っ先に買いたいレベル。
……とまあ皆さんも一目見てお分かりの通り、だいぶウキウキしながら今回の感想を書いています。謎を考えながら記事を書くのも楽しいですが、いい終わり方を迎えた感動を噛みしめながらブログ記事を書いていくのも実に楽しいですね。『五等分の花嫁』に限定したら残り少ない話数になってしまいますが、皆さんも感想ブログを始めてみるのもいいと思いますよ!
と言った前置きをしつつ今週の感想をつらつらと述べていくんですけど……いやあ、ついに来ましたね!
「ついに来ましたね!」って書いた瞬間に「五つ子がムドーと決別する展開」も来たし「マルオがムドーに引導を渡す展開」も来たし「五月が母親を脱却する展開」も来たし「五月が敬語で話さなくなる展開」も来たので何に対して「ついに来ましたね!」と言ったのか自分でもよくわからなくなってくるのですが、とりあえずついに来ましたね!
おそらく読者の皆様にとっては「五月が敬語で話さなくなる展開」が一番衝撃的だったんじゃないかと思われますが、どうでしたか?かく言う自分も大きな衝撃を受けて1時間ほど感想が出てこなかったわけですし。
言葉にするのが難しいのですが、ここの描写は「実に感慨深い」の一言に尽きました。1話からずっと敬語を使うキャラクターとして特徴付けされてきた五月でしたが、物語の途中でその理由が明かされ、さらにそこから脱却する過程までも丁寧に描かれ、トドメにいわゆる「タメ口」で話す。
これを見て何も思わない人がいるだろうか、いや、いないでしょう!などと思わず断言したくなるくらいの奥深さがあの見開き絵にあったと思いたい。今はまだタメ口にたどたどしさ・初々しさばかりが感じられるでしょうが、いつか自然に風太郎や家族へタメ口で喋れるようになれるのを大いに期待しましょう!
実父との決別
実父の娘達への愛情
前回、自分の意志で零奈のような先生を目指すことを決意し、風太郎から勉強を教えてもらう前に「やらなければならないことがある」と言った五月。今回の話の大部分がそれに費やされました。
実の娘が母親と同じ教師になる事を頑なに拒み、『呪い』『歪んだ愛執』『後悔していた』などあの手この手で五月を翻弄してきたムドーでしたが、迷いを完全に断ち切った五月と姉四人、そして上中下トリオの3人が集結してムドーについに引導を渡す事となりました。
前回の感想にて、ムドーの父親としての愛が本当にあるのかを確かめるべく五つ子ゲームをするのではないか?と予想をしましたが、うーん、自分が想定していたものとは違いましたね。5人の中から誰が誰なのかを当てるパターンの五つ子ゲームを連想していただけに、「今回の五月が既に別の姉妹と入れ替わっているのでは?」という疑いを一切持てませんでした。
ここのコマが出てくるまでにこの五月が三玖だと見抜けた読者の皆さんは三玖愛が素晴らしいですね!これは誇りに思ってもOKなレベルですよ!
ところで余談なのですが、マルオが「ここに五月君はいない」と言ったのに対して下田さんや勇也が果たしてどんなリアクションを取ったのか地味に気になってます(笑) 見分けがついていたのか、はたまたついていなかったのか。ついていなかったらいなかったで、それはまあ、何だか楽しい事になりそうな気もしなくもないんですけど(笑)
ちなみに前回でも言ったことなのですが、メディアに露出して顔が世間に知られている一花や直接会って会話をした五月ならともかく全く会話もしていない顔もハッキリと見ていない三玖相手に変装を見破るのはさすがに鬼畜じゃないか?と思うのもありましたが、今回も今回で懲りずに空っぽの愛を言葉に出してしまっていたわけだから別にもういいですよね?これ。
何はともあれ、ムドーの娘達への愛情などそもそも存在しなかった。「心が張り裂けそうな思い」だとか、「罪の意識に苦しみながら」だとか、そう言ったこれまでの贖罪の言葉が全部嘘っぱちである事がようやく今回で証明されました。
「愛があれば見分けられる」。それは他者が五つ子達と向き合い理解していく上で非常に大きな意味を持つ、零奈が遺した言葉です。そしてその言葉をずっと覚えている娘に対し腹を立てて怒鳴るムドー。
塾で会った五月の姿にかつての零奈を見出してしまい、自分が逃げ出してしまった事を思い出してしまったのでしょう。しかしその事実に真っ向から向き合おうとせず、認めようともしなかったために、零奈に関する全てを否定してきました。零奈が選んだ夢を「似合わぬ教職の道」と評した事、零奈の言葉を「いい加減な妄言」と決めつけた事、零奈の全てを受け継ごうとしている娘達の姿勢や意識を「呪い」と言って諦めさせようとしたり忘れさせようとした事、終いには零奈の新しい夫を自分の事を棚に上げておいて「父親としては不合格」と断じた事。零奈に関する何もかもを認めようとしない。これほどまでに独善的だったのがかつての父親の本当の姿だったんですね。
再び余談をば。
あとこれ。娘が先生になる事でムドーの誰にも知られたくない秘密がばれる可能性があるから必死に止めてるのか、ムドーのやり方に零奈から一言もの申されてベテランのプライドが傷つけられたから零奈への怨恨の意味も込めて言っているのか。前者だったら最悪殺人事件が起きても不思議じゃないな……。 pic.twitter.com/9pAbUydh6u
— 東王@五等分の花嫁専用 (@428AO) November 19, 2019
読了後7時間後の感想なんですけど、「自分の非を認められないから零奈の全てを否定したい」だけだったので多少ズレた感想になってしまいましたね。ブログを書いてる最中に本当はどういう事なのかに気付いてしまうと、こういう自分の呟きをどうすればいいのかわからなくなってしまいます\(^o^)/
五月とマルオの思い
一度は零奈の後悔に悩まされてしまった五月でしたが、これまで自分の見てきた母親の姿を思い出して、その人生に間違いはなかったはずだと全力で否定します。
親が子供をよく見るように、子供も親をよく見るもの。零奈がどれだけ苦労をかけて娘達を育ててきたのか、そしてどれだけ親の愛情が注がれてきたのかは娘達にもしっかりと伝わっていました。
命を削ってまで自分達を育ててくれた零奈が自身の人生をどれだけ「間違いばかり」と言ったとしても、その愛情を自分達に絶やす事無く向けてくれていたのは紛れもない事実だった。だからこそ、五月は零奈の人生が間違っていたはずがないと強く言い放ちます。
そしてその五月の言葉を引き継ぎ、裏切られて傷ついた零奈がどれだけ娘達の存在に救われ、希望を見出していたのかを何も知らないムドーに言い聞かせるマルオ。その瞳に怒りの感情を宿らせ、ムドーに本物の「親失格の烙印」を押し付けました。
……何度見てもぐっと来るものがありますよね、ここ。全責任を背負って娘達を全員引き取ったのも、不器用ながらに娘達に愛情を注いできたのも、元々は零奈に対する大きな愛情があったからなんですよね。もはや一片の愛情すらも感じられないムドーとの対比も相まって、相当にマルオがかっこよく見えました。
さらにその上で、五月の将来の夢についてああしろこうしろと口出しをせず見守っていく事を伝えたのも「父親の在り方」として素晴らしい振舞いだったなと思わずにはいられませんでした。
学園祭初日に「こういう時に道標になってくれるのが親の役目なんじゃない?」と二乃が言った事、そして学園祭二日目にマルオが家族と向き合うのを決意した事。その二つの事象が学園祭三日目で交差したのはただの偶然ではなかった、と強く思わせられる瞬間でした。
最後まで零奈に謝罪のなかったムドーに、五月が決別の言葉を伝えます。
ここの五月が、ムドーの愛情を完全に嘘と見抜いて「(あなたにとって体のいい)罪滅ぼしのコマにはなりません」という認識でいるのか、それとも本気でムドーが罪滅ぼしをしようとしている風に見えたのかは分かりません。ですが、どちらにせよムドーはもう手詰まりです。これからずっと、それこそ「呪い」のように零奈への罪の意識が憑いて回る事でしょう。
それでもまだ「僕がせっかく……」と何か言いかけていたので、何かまだ隠されている事でもあるのかな?ともチラリと思うのですが、素直に『自分の非を認められない故のただの悪あがき』だと捉えておきましょう。もうこのおっさんの事を考える必要も理由もないと思いたいですね。
黄昏時の風と月
自身の夢も家族の問題も無事に終わり、一人その場にいなかった風太郎の仕事を手伝う五月。
かつて母が亡くなった時に代わりとなって皆を導こうと決意した事を風太郎に話した事がありましたが、その本当の理由は「寂しいという心の隙間を埋めるため」でした。
日々を過ごしていく内に自分が五月なのか?それともなり代ろうとしていた母親なのか?それが分からなくなってしまい、自分の夢が本当に自分の夢なのか自信を失ってしまいました。そんな彼女に対して五月が母親とは違うんだという事を教えてくれたのが、他ならぬ風太郎だった。
五月はその感謝の気持ちを第一に伝えるべく、「母脱却」と称して敬語を解除し、
君だって私の理想なんだよ
それだけ聞いてほしかったの
と、憑き物が取れたような微笑みを浮かべて風太郎に言うのでした。
率直に言って今までで一番可愛かったです。というか五月の大きめな絵はどちらかというと「可愛い」よりも「美しい」の方に傾いている印象がありました。それは零奈の面影をそこそこに意識して描いたからだと思うんですけど、今回では先ほど述べた『母脱却』をより強く意識させるために「可愛い」に全振りしたのかなとも思いました。
五月は花嫁?
ブログを書く日付がガラリと変わり、この際思いっきり話題を変えるのですが、皆さんもご存じの通り、今回で五月編が終わる(と思う)にも関わらず、五月は風太郎にキスをしませんでした。
五月が階段から降りてくるシーンでは、おそらく読者の大多数の方々が「ついにっ!?」と思い、次のページを恐る恐る開いたことでしょう。僕は完全にそんな感じでした。
しかし、五月は風太郎にキスをせず、外の風景に目をやって世間話をするに終わりました。また、上述した見開きのコマとその前後を見ても、五月が風太郎に対して「好き」の感情を示しているシーンも当然ありません。
これはハッキリ言って想定外でした。先の4人の話で連続してキスシーンがあったため、五月も姉と同じようにどんなストーリーだろうと最終的に『風太郎への恋心』に話が直結し、キスをするシーンが描かれるのではないかと予想していたのですが、それは大きく外れましたね。
四人のキスシーンが描かれ、五月だけ描かれない事で『五月が特別な人 =将来風太郎と結婚する花嫁になる人』という構図もあるのかもしれませんが、自分は今回の描写を見て、五月は花嫁候補から外れたと見てもいいのかなと思いました。
そもそも今回の長編は『五つ子が風太郎に全てをぶつけ、風太郎が誰か一人を選ぶ』という感じに位置付けられていると推測できます。それは『スクランブルエッグ』『シスターズウォー』の時とは違い、恋愛面で受け身だった風太郎が初めて能動的に動いた長編だからです。
それなのに、姉四人が既に「好き」という感情を表す以上の行動を各自しているのに(四葉は認識されませんでしたが)、五月はそもそも恋愛感情を示す段階にすら至っていない。
敬語が解除された事で本格的にヒロインとして風太郎争奪戦に参戦か!?と期待する人も多数いると思いますが、「いや全く参戦してないのでは?」というのが個人的な意見です。キスはしないまでも、せめて風太郎の前で恋愛感情のカケラでも見せてくれればあるいは……という感じでした。
上記のような感想を抱くのも、やっぱり『スクランブルエッグ』の鐘キスの存在がとても大きいからなんですよね。ものすごく素直な考えをぶつけるならば、あの場面は「風太郎にキスをしたいから近づいて、あのキスを求める姿勢をし、風太郎とキスをした」と見るのが一番妥当なわけです。
この作品はミステリー要素もありますが、基本はラブコメ漫画の路線で走っています。そういった観点で見れば『各キャラクターの恋愛感情にも焦点が当てられるべき』という思いも当然あります。
なので単純に『鐘キスの時点で恋愛感情が全く見られなかった五月はその後どういう展開になろうとも花嫁に成り得ない』というのが自分の考えで、それをどうにかしようとして『五月は林間学校の時点で恋愛感情を持ち、自覚している』という論を出したんですよね。で、四葉のように『後から恋愛感情を持っていた事がわかるような描写』がやって来るんだろうなと思っていました。
詳しくは92話『秘密の痕』に書いてありますので、時間に余裕のある方はどうぞご覧くださいませ。
そして『高校最後のイベント』と銘打って描かれる学園祭編が五月にとって恋愛感情を風太郎に示す最後のチャンスになるだろうと思っていたのですが、結果は敢え無く……と言ったところです。
五月個人の物語として、また、中野家が一つになるという意味において『最後の祭りが五月の場合』はとても感動的で見応えのある回であったと断言できますが、それと同時に五月が花嫁候補ではあり得ないと考えてしまったのも事実。
もはや大事な部分の予想をことごとく外すことに定評のある自分ですが、果たしてこの予想も外れてしまうのか否か……何はともあれ、今後に期待していきましょう。冒頭の「ウキウキしながら感想を書いています」とは何だったのか……
まとめ
決意を再確認して母親になる事から脱却できた五月の、そして血が繋がらずとも絆を一つにする事のできた中野家の輝かしい再スタートが切られた、素晴らしい回でした。
これでようやく五月回も終わったと思いますので、次回はついに後夜祭の描写がなされるのではないかと予想しています。一花回で「特にすごい」と言われていたので、それに関する出来事が起こるのではないでしょうか。
102話の感想記事で『風太郎が全校生徒の前で誰かに盛大に告白するのでは?』という予想を立てましたが、そもそも初日の段階で五人に告白していますのでその可能性はなさそうかなと。
それとキャンプファイヤーがある事から、林間学校の伝説になぞらえて『最終日に踊ったカップルは結ばれる』という伝説があるのでは?といった推測もしていましたので、そちらにシフトしていきましょうか。
それから『最優秀店舗』という単語もちょこちょこ出てきたので、おそらく3年1組のパンケーキ屋が選ばれてくれることでしょう。
ぶっちゃけて言えば100話の「待たせたな」の後の描写がなされるのか?それに尽きます。今までもねぎ先生はちょろっとだけ先の展開を読者にお見せして次週へ持ち越すパターンも何度となくありましたので、もしかしたら次回で風太郎が選んだのが誰かわかるのかもしれません。
ただ、これまでの巻末の回を見ると『5巻で零奈登場・7巻で二乃の告白・8巻で鐘キス・9巻でボート零奈=五月だと判明・10巻で京都の子=四葉だと判明』という感じにカミングアウトして終わっていった事も考慮すると、やはり次回は風太郎が誰に告白するのか不明なまま終わりそうな気もしますね。
一つだけ言えるのは『ねぎ先生がいきなり爆弾を投げつけてくる可能性も決して0ではない』という事でしょうか。何かのはずみでもしかしたら京都の子の正体を当ててしまうイベントも発生するのかもしれません。ともあれ何が起こっても驚かないように心構えをしておいた方がいいのかなと思いました。結局驚くんだろ?とは言ってはいけない。
五人の話も終わっていよいよクライマックスが見えてきた学園祭編。高まる緊張感を楽しみつつ、今回はこの辺で終わろうと思います。
ご拝読ありがとうございました。
*本記事で掲載している画像は©春場ねぎ・講談社/「五等分の花嫁」より引用しています。