東王の日記

東王の日記

五等分の花嫁の感想考察日記!

五等分の花嫁:88話『私とある男子⓵』感想 「零奈の願い」と「遠き日の誓い」という悪夢

  僕はね、五等分の花嫁の中では四葉が一番好きなんですよ。あの屈託のない笑顔。あの天真爛漫で裏表のない性格。あの突拍子もない行動力。そしてどんな時でもポジティブに捉えられるあの前向きな強い精神。中野四葉が中野四葉であることを証明するのにこれ以上の理由はないと断言できる。それくらい、自分は四葉が好きなんですよ。

 

 そんな四葉に暗い部分なんてあるわけがない。あったとしても最後の試験で明かされたあの一件だけなんだ。その問題も姉妹みんなの力でクリアすれば風太郎争奪戦に笑顔で参加してくれる。そんな自分の中にある中野四葉像を崩すまいと、必死に「京都の子=五月」説を追っていたんですよ。四葉の思わせぶりな描写は全てミスリード!ただの明るい子でした!

 

 なぜかって?「四葉にそういう一面が存在してた」と認識するのが怖かったからですよ。京都の子であると認めたら、それは明るく裏表のなかったハズの四葉に暗く重い過去が存在してたということを肯定してしまう事に繋がってしまう。そんなのは考えたくありませんでした。

 

 でも、86話『シスターズウォー七回戦(裏)』で「一花が僅かな間といえ風太郎と出会っていた」という場面があったのを認識した途端にね。「京都の子=五月」の説に重大な欠陥が生じてしまったわけでして。途中まで抗い続けたものの、結局エキシビションマッチが始まる2時間前に四葉説に屈服。しかも、案の定京都の子は四葉であると判明しました。

 

 この時からですね。ついに四葉に試練というものが訪れてしまうんだなと思ったのは。もちろん、物語が進むに連れて登場人物の一人一人に何かしらの試練がやってくるのはよくある話です。それはこの作品であろうと同じこと。

 

 そして前回から四葉の視点を中心に、過去の物語が始まりました。もちろん過去は過去で何もないハズがなく、読者が知っている唯一の悲劇がゆっくりと、じわりじわりと迫って来てるんだよなあ、いつかはその瞬間が来るだろうから覚悟しなきゃいけないなあ……って思っていました。

 

 

 

 そんな前置きをしつつ今回の話を見た感想を述べますと、「苦しい」と言うか「辛い」と言うか、とにかく心を抉られた気分で一杯でした。直後のツイッター感想などでは冷静に考察してるフリはしてるんですけどね。全国の四葉大好きな同士の方々もきっと自分と同じような感覚を持っているものだと勝手ながら思っていますがいかがでしょうか?四葉の闇をこれでもかというくらい見れて最高だZE!しかも五月もやんけ!』とかいう闇属性を心に宿している方達にとってはすっごいワクワクしながら読めてたんだろうなあ。

 

 

 え、僕ですか?そんなわけないじゃないかっ!

 

 

 

 他の姉妹とは違うんだ

 何と言っても、今回のお話では前回以上に四葉「自分は他の姉妹と違う」ということを主張していたのがやたらと目につきました。前回は「五人一緒でいいんだよね?」みたいな葛藤のようなものがそこそこに見られましたが、そこから四葉の心理状態は大きく変わっています。
 
 その原因は何と言っても『一日中ずっと自分と一緒に歩き回っていた風太郎が一花と仲良くしているのを見てしまったから』でしょう。もちろんこれは単純に四葉が一花に嫉妬している、といったものの話だけではありません。ただ、風太郎が四葉と見た目がそっくりな一花を四葉だと思い込んでおり、そんな一花に何の疑問も持たずに笑顔を向けているのを見てしまった。それが四葉にとって大きな衝撃、いや、ショックと言った方が正しいですか。
 
 もしも一花と自分が同じ顔じゃなかったら風太郎も一花を四葉と勘違いせず、四葉を探して一緒に過ごせる時間が増えていたかもしれません。ですが、時すでに遅し。この事を切欠に、四葉「五つ子が同じ顔、五つ子はいつも一緒」いう状態から一刻も早く抜け出したい気持ちに駆られたんだと思います。

f:id:azumaou:20190606203904p:plain

そこにいるのは自分じゃないんだ

 しかし、そんな四葉に追い打ちをかけるかのようにもう一つの辛い出来事が襲い掛かります。それは「皆と間違えられない」ようにしてきた四葉の行いや努力が、実の母である零奈に認められなかった事でした。

 

 皆と見分けが付くようにリボンを付けたこと。そして皆よりも勉強して一番の成績を取ったこと。それら全ては「自分は姉妹と違うんだ」という事を証明したかったためです(勉強については別件で後述しますが)。リボンで見分けてもらえれば、今度は同じ時間を過ごした人も間違わなくて済む。自分を自分と認識してもらえる。

 

 ですが、それらに対して零奈は「何を身に付けているかなんて大した差ではありません」「一番にならずともあなたたちは一人一人特別です」など、四葉の行動を肯定してるようには見えない言葉を投げ返しました。これほどまでに四葉にとって残酷な言葉はないでしょう。「努力は素晴らしく、何も間違っていません」と言われているものの、四葉が欲しかった言葉はそういうものではありませんでした。

 

 

 

 零奈は五つ子内でいつかは差異が現れることもわかっていることでしょう。というか、この時点でもどの程度の差異が現れているかをしっかり理解していると思ってます。しかしそれらは全て『成長するにつれて自然な形で発生する差異』です。

 

 『意図的に生み出された差異』、ましてや『五つ子内での比較によって生み出された差異』などは全く望んでいないことでしょう。だから『姉妹を見分けてもらえるためにリボンを付けた四葉『単純に四葉の真似をしてヘアピンを付けた五月』とで零奈の対応が違うんです。

f:id:azumaou:20190606231304p:plain

零奈が望んだ本来の差異

 

 もちろん零奈も四葉のそんな努力は分かっているハズ。ですが、それを認めなかった理由はなぜか?

 

 これはあくまでも自分の予想なんですけど、四葉が意図的に差異を求めることを零奈が認めてしまった場合、その先には「姉妹間での競争、ひいては姉妹間での対立や確執、そして姉妹間での孤立」が待ち受けているのではないでしょうか?風太郎と楽しそうにお喋りしている一花を見た時の四葉の表情、それからお爺ちゃんの所から帰ってくる時の「勝ってるんだよ」「そっくり"なんか"じゃない」という四葉のセリフを見る限り、それは十分予測される事だと思われます。

f:id:azumaou:20190606233126p:plain

差異に拘る事で訪れるであろう姉妹間での争い

  そういった争いごとは「一緒にいてほしい」という零奈の願いからは遠くかけ離れた行為です。どうか決してそのような状態にならないでいてほしい、5年後に三玖が二乃に言ったような「足りないところを補い合える」関係を5人で築いていってほしい。零奈にとって、姉妹全員が特別で大切な存在なんだから。

 

 「大切なのは五人でいること」というのはおそらくそういうこと。この「いる」とは場所的な意味での「居る」という意味で言っているだけじゃなく、「心の拠り所」と言った意味も含まれてるんだろうなと。

f:id:azumaou:20190608191053p:plain

五人でいること

 ただね、故人、しかも存命時でも重い病気を患っている人に対してあれこれ言うのは非常によろしくないのは重々承知しているんですが、もう少しだけ四葉の目線に沿った言い方もできたんじゃないかな、と思っていたりもするんですよね。

 

 「大した差ではありません」と言われても、四葉自身がリボンを付けて『目に見えて大きな差が出来てる』という認識を持っていたハズだから、零奈の言葉は到底理解できなかったことでしょう。それに、当時の四葉『他の姉妹と違うこと』に執着していてそれ以外の事が見えていません。視野が広かったであろう零奈ならもっと四葉の受けるショックを少なくする言葉を送ることもできたんじゃないかなって。そんなことも思った自分がいました。

 

 まあそう思いつつも、勉強を頑張った四葉なら自分の言葉もいつか届いて理解してくれるかもしれない、もしくは他の姉妹が導いてくれるかもしれないことを期待して信じていたなど、零奈の思惑も分かっていない状態なのでどうとも言える話ではないんですけどね。願わくばそういったものであるように祈りたい。

 

風太郎との誓い

 それからもう一つ、四葉の枷となっているのがこれ。6年前の修学旅行初日の夜、貧乏という共通の話題を中心に風太郎と会話をする中で、一つの大きな誓いが交わされました。風太郎は妹のために、そして自分は母親は自分のために勉強を頑張ろう。

f:id:azumaou:20190606065058p:plain

一生懸命頑張ろう

 しかし、その楽にさせてあげたかったお母さんは二か月後に亡くなってしまいました。そのため、四葉勉強する大きな目的を失ってしまうことに。零奈が存命中の頃はテストで姉妹の中で一番いい成績を出していた四葉ですが、その後は勉強に全く手が付かなくなってしまったのでしょうね。たくさん勉強をして賢くなっても、お母さんはもうどこにもいないんだから。

 

 修学旅行の夜に交わした誓いが四葉にとって意味を為さなくなってから5年後、黒薔薇女子という高校で四葉一人だけが落第する結果を残してしまいました。そして落第が確定した時に(おそらくマルオの力で)別の高校に転校してきましたが、その際にも他の姉妹がついて来ることになりました。

 

 他の姉妹は「嫌な顔をせず」と言っている通り、そこまで大事には思っていないようですが、それでも四葉「皆を不幸に巻き込んでしまった」と認識するほど心に大きな傷を残してしまいました。もっと勉強をしておけばこのような事は回避できたかも、という後悔の念もあったのかもしれません。

 

 そんなボロボロな状態の中、転校先の高校であの上杉風太郎君との再会を果たしてしまいます。

 

 四葉風太郎を京都で一緒にいた男の子だといつ思い出したかは現在のところ不明です。だけどどの時点だろうが、四葉にとっては「とんでもない悪夢だ」と思ったことは間違いないでしょうね。勉強に関してもはや0点を取ることが当たり前な四葉と、もはや100点を取ることが当たり前な風太同じ場所に立っていたはずの二人が「生徒と教師」の関係で示されている通り、今や真逆の場所に立っているんですから。

 

四葉の態度はわざと?

 ここで四葉風太郎をずっと憶えていたor家庭教師前に思い出した場合の疑問点』の件で書きかけでボツにした文章があるのでそのまま載せますね。

 

(ボツ記事の引用始め)

 

 まず四葉風太郎が会った日、四葉風太郎が落としたテストを拾って返そうとします。ただ、その時に自分の0点のテストも取り出して一緒に見せているんですよね。家庭教師前から風太郎との思い出を記憶してるなら風太郎に0点のテストを見せるか?」って思って気になってしまうんですよね。だって風太郎に幻滅されたくないんですよ?事実、この後ドン引きされてますし。

 

 家庭教師が始まれば、いずれ『姉妹の中で四葉が一番成績が悪い』という事は露呈するでしょう。事実、翌日の小テストの点数も四葉が8点で一番低かったことは風太郎に知られてしまうわけですし。しかし、だからと言って家庭教師の話が出る以前からかなりのおバカキャラであることを風太郎に認知させたり、あるいは「京都の事は絶対にバレませんように!」と覚悟を決めて、風太郎の前でもいつも通りのおバカキャラで行こうとするでしょうか?

f:id:azumaou:20190525194928p:plain

風太郎にバレない自信があった?

 二つ目は五人合わせて100点を取った直後。「逃げろ!」の言葉で一斉に姉妹が逃げた時、四葉も一緒に逃げましたね。いや、逃げるのはいいんですけど、その時に「あはは 前の学校思い出すね」と屈託のない笑みをしながら姉妹と話しています。これも風太郎にバレたくないけどバレなければ大丈夫!」という心理状態での発言だとしたらすごすぎる……四葉がまるで女優になってもおかしくないくらいに演技力ありすぎる。

f:id:azumaou:20190526063929p:plain

めっちゃいい笑顔

 最後は一気に飛んで86話『シスターズウォー七回戦(裏)』で、二乃が「一花がフー君と会った初日から気にかけてたのは覚えてるけど」と言っていた事です。一花は「気のせいだよ」って言っていたけど、いざこうしてみると四葉の方は風太郎を気にかけていなかったのか?という点が気になってきますね。二乃が一花を見て四葉を見ない理由はないから、きっと四葉も見てるはず。その上で一花の名前だけ出したなら、四葉はきっと気にかけていなかったんだろうなあ。 

f:id:azumaou:20190526071325p:plain

四葉は気にかけてなかったかも

 以上の3点から『ずっと憶えていたor家庭教師前に思い出した』という考え方は少し疑問が残るものとなります。最初から憶えててくれれば漫画的にある種のロマンのようなものを感じるのは間違いありませんが、さすがに外部(二乃)の目から見ても今まで通りってなるとちょっと考えにくいですかね。

 

 ……まあ二乃の場合は一花が気にかけてたことは気付いてたのに、その一花が女優を隠れてやっていた事に何故か気付けなかったので、そういう意味では100%の根拠にしない方がいいのかもしれません。

 

(ボツ記事の引用終わり)

  もしも四葉が最初から風太郎を憶えていた場合、風太郎と出会った初日からとんでもない行動に走っているのを自覚してるわけなんですよね。その理由は『一生懸命勉強を頑張ろうと言っていた女の子が実は自分だったのを隠したい』から、ということなんだろうけど。

 

 しかも、ただ隠すだけじゃない。風太郎の脳内のイメージと真逆になるように振る舞っているとも見えます。実際、風太郎は京都の子の頭がいいものだとばかり思っていましたしね。そもそも風太郎自身も学力が当時に比べて格段に良くなっているのですから、あの日誓いを交わした子も今では優秀な子だろうと考えるのは当然と言えば当然ですが。

f:id:azumaou:20190609111846p:plain

こうなることが四葉の作戦?

  ていうかこのシーン、四葉にとっては作戦が成功したと言えますが、でもその胸中は複雑なことになってるんでしょうね。風太郎が「あの子」も頭が良くなっていると思い込んでるから、ますます言い出しにくくなってしまっている(そもそも言う気はないんでしょうけども)。

 

 

 

 さて、四葉風太郎に気付いた場面は一体どこになるんでしょうね。一花の時みたいに今後の展開で描写されることでしょうから、その前に自分なりの答えを出しておきたいところ。直感で言えば「始まりの写真」で二乃のアルバムを皆で見ている所ですけどね。

 

これから四葉はどうすれば?

 ということで、現状の四葉は記事タイトルの通り「零奈の願い」と「遠き日の誓い」が大きな枷になっています。というか零奈の「大切なのは五人でいること」っていう言葉がこれほど大きな枷になってしまっていただなんて、今まで思ってもいませんでした。これは相当に根が深い……。

 

 81話『シスターズウォー四回戦』で風太郎が「おこがましいことなんじゃねーの?全てを得ようなんてな」と言った事に関して

 これは本当に、フータローの言う通りです。だけどもしかしたら、この五つ子の絆なら、それを乗り越えていく事だってできるんじゃないでしょうか。一人で皆の幸せを実現できなくても、五人集まればきっと何とかなる。かつてフータローも言ってたじゃないですか、「お前らが五人揃えば無敵だ」って。今こそもう一度、その可能性を信じてみるのは十分にアリだと思います。

 

 それに常に一歩引いた状態の四葉を同じ線上に立たせることができるのは、他ならぬ姉妹だけなんです。いつか四葉に心からの言葉をかけて今の状態から脱却させてほしいですね。

  ってな感じで、正直あとは姉妹が四葉に感謝の言葉を述べればこれから四葉も解放されて、晴れて風太郎争奪戦に参加できるんじゃないかと思ってたんですよ。でも、それだけじゃ足りなさそうです。やっぱり風太郎が風太郎でしかできないことを四葉にするしかないんでしょうね。

 

 ってなると、やっぱり零奈の正体が四葉であることを風太郎が知る事が重要なんだろうなあ。今の風太郎は修学旅行が終わった時点で既に「零奈は五つ子の中の誰か」「五つ子は馬鹿」という事は知っています。でも、そんな零奈に対して勉強できない点で幻滅するどころか、孤独だった自分を救ってくれたことで強い感謝の感情が持っていた事は明らかです。だからきっと、四葉の重い過去を知っても幻滅などせす、受け入れてくれることだろうと思ってます。

 

 まあ、僕はもう全国模試の問題を乗り越えた段階で風太郎への心配という感情は1ミリもないですからね!きっとやりとげてくれるでしょう。

 

お母さんになります

 話は変わって五月の件。零奈が亡くなった後で、五月は皆を導こうとして母の真似をし始めたために敬語になったのではないか?というのは五月長女論の時点で行った考察の一部ではありました(より正確に言えば、悲しみに暮れた四葉を長女としてしっかりしないといけないと思ったので、ですが)。

 

 それで、それがまあ今回で敬語を使う五月の姿を見て予想通りになったのはいいんですけど、何と言いましょうか。いくらなんでも真似をし始めるのが唐突過ぎませんか?大好きなお母さんが亡くなった時に取る行動とはとても思えません。姉妹の中で一番母にべったりくっついてた五月ですよ?4姉妹が号泣してる中、一人だけ「お母さんになります」だなんて泣きながら決心してるわけなんですけど。

f:id:azumaou:20190609090404p:plain

普通こんな風に悲しむよね

 とまあわざとらしく問題提起をしたんですが、これは零奈が亡くなる直前に五月に何か遺言を残したからなんじゃないかって思ってます。自分の推測を述べるなら、もうご存知の通り『五月長女論』なんですけどね。他の理由を考えるにしても「零奈の真似をする」のはともかく、「五月が皆を導こうとする理由」が今のままだと薄すぎる気がするんですよね。

 

 例えば零奈が末っ子の五月に「みんなをお願いします」って言うなら、それこそそういった類のものはそもそも長女であり、5人の中で最もリーダーシップが発揮されている一花に任せるべきなんです。だけどその一花も他の姉妹と同様に、零奈の死に大きなショックを受けてる姿を見せている(と思う)以上、零奈の遺言などは聞いていなかったと思うんですよ。

 

 そして五月が他の姉妹に比べて悲しみを抑えたような印象を受けているので(もちろん悲しみの度合いが他の姉妹より少ないと言っているワケでは全くありませんが)、事前に零奈の死を伝えられた可能性があるんじゃないかなあ……

f:id:azumaou:20190609090334p:plain

なんていうか不自然。

 あとちなみにですが、「子供が亡くなった親の真似をすることがある」というのも実際にある話だそうです(僕は漫画でしか見たことないのでどういうものかは想像する事しかできませんが)。

 

 ただ、そういった状態の子供の心を推測するなら大抵は「親の死を受けとめ切れない子供が精神を自衛するために行うもの」だと思っています。五月のように「お母さんになります」とわざわざ言葉に出して死を受け入れて決意するようなものではないんじゃないかな……。

 

 それと、その理屈は「母親を真似する理由」としては十分理解できますが、「皆を導こうとする理由」となると少々首を傾げてしまいます。親を失った子が親の仕草や趣味・嗜好など、表面に現れる部分を真似することは十分考えられますが、「親の役割」までも真似することってどうなんでしょうか?ありえなくはないけど、なんだか腑に落ちない……。

 

 もちろん「母親になる事=皆を導く事」と思って最初はそのように振る舞うのかもしれないけど、5年も時間が経っているのにその意識が根本に残っているのが個人的には不思議でしょうがない。さすがに5年も時間が経っていれば母親の真似をしていることを自覚できるし、そうなったら皆のリーダーであり長女の一花と「皆を導く事」に関して何か話をしたりするんじゃないでしょうか。

 

 というか5年後に五月自ら言ってるんですよね、「導くことを決めた」って。「決めた」んですよ。「真似してたら自然とそうなってた」っていう話じゃなくて。まあこれは未来の五月がそう言ってるだけで5年前の自分の心情を改変した可能性も0ではありませんが。

 

 

 もちろん零奈の死によって五月が「自然に」敬語で話すようなことになっていたとしたら間違いなく五月長女論は崩壊するでしょうが、今回のを見る限り唐突さと不自然さが目立つので、まだ五月長女論の撤回はできそうにないですね……。今後の五月の物語で零奈の話がどう出るのかを待つことにしましょう。

 

 え?五月が長女であることを今まで隠してたのが一番不自然なんじゃないかって?ははは、これは一本取られましたな!

 

風太郎の視線

 ところで話は唐突に本編に戻しますが、物語の最初は風太郎と四葉が一緒に京都を散策しているシーンから始まりました。しかしこれ、何て言えばいいんでしょうか。もしかしてこれ風太郎君、まさかカメラのファインダー越しに見えた四葉の笑顔に思わず一目惚れしてしまったんじゃありませんか?とりあえず目の前のこの子は窮地を救ってくれた恩人なわけですし。無意識に持っていた感謝の気持ちがあったから、無自覚に「自分の目=カメラの顔認証システム」が四葉の顔を捉えてしまった、という風にも受け取れますよねこれ。

f:id:azumaou:20190605201750p:plain

もしかして:一目惚れ?

 思い付きで書いたことなんですが、一応考えられなくもないですよね。この後に写真を撮らず「なんで付いてくるんだ、どっか行け!」って言ってるのもほら、小さな子によく見られる『好きな子をからかいたくなる精神』に近いものを感じませんか?実際、入院時の回想シーンでも、過去の風太郎は竹林嬢にコブラツイスト、じゃねーな。なんだあれ。とにかく変な絡み技をカマしてましたもんね。

 

 だから、現在の修学旅行前の買い物でらいはが「お兄ちゃんの初恋の人だよね」と言っていたのも事実としてある意味当たっている可能性は大いにありえますよね。極めて正確に言えば風太郎の現時点で判明している初恋の女の子は竹林嬢ですが、らいはは恐らくその事については知らないのでしょう。

風太郎の優しさ

 続いて、夜になるまで一緒に京都を歩き回った風太郎と四葉。最後に立ち寄ったお寺でその事に気付き、バスに乗ろうとする風太郎達。しかし、お守りを五個買ったためにバスに乗るお金すら持っていなかった四葉のために風太郎がとった行動は、自分の所持金200円をお賽銭箱に投げる事でした。「無くなっちまった」とは言っていますが、まーー本心からやっちまったと思っていないのはまあさすがに丸わかりですね。

f:id:azumaou:20190606002536p:plain

無くなっちまった (テヘペロッ)

 この時既に上杉家が貧乏な生活を強いられていた事がすぐ後で判明しますが、それでも風太郎がなけなしの財産を手放したのは、きっと四葉のことが気にかかるからなんだろうなあ。もしかしたら上述した通り四葉に対してほのかな恋愛感情を持っていて『一目惚れした子とまだ一緒にいたい』という意識からとった行動かもしれませんし、そうでなくとも、そもそも風太郎が困っている子を放置できない性格をこの時から既に持ち合わせているのかもしれません。

 

 そして何よりも、四葉は「不要だ」と自覚してしまっていた自分を「必要」と言ってくれていた女の子です。その子を放っておいて自分だけ帰る事なんて到底考えられなかったことでしょう。二人がこの日にどんな思い出を残すことになったのかはわかりませんが、現在の風太郎がその日の事を楽しかったと振り返って語っていました。望むなら、時間が許す限りずっと一緒にいたかったのではないのかなって。

 

 現在の時間軸で家庭教師が始まり、二乃とまだ友好的な関係を築けていなかった頃にも同じような光景がありましたね。物理的な意味でも精神的な意味でもマンションの扉を自分で開けることができない二乃に対して、過度な干渉は嫌だと言いつつ一度は帰ろうとしたけど結局独りぼっちの二乃が気にかかって元に戻ってくる風太郎の場面。これが小学生の頃からやっていた行動なんだと考えると色々納得がいきますね。 

f:id:azumaou:20190606001604p:plain

自分も帰れない理由を屁理屈で作ってしまう男

マルオについて

 零奈が亡くなった後、バラバラになってしまうのを恐れた五つ子をマルオがまとめて引き受けることになりました。そんなマルオに関して今回で分かった事として、マルオが京都に来たのは四葉が行方不明だと零奈が相談されたからわざわざ探しに来た』という事。それから、『零奈が亡くなるまで、マルオは四葉を除いて五つ子との会話を一度もしたことがない』という事でした。

 

 まず四葉を探しに来た件ですが、「え、そこまでする?」というのが正直な感想ですよ。マルオがもともと京都に住んでいるならわかりますが、そういうわけでもないでしょうに。マルオもマルオであちこちをめちゃくちゃ歩き回ってたんでしょうか?今のご時世だと普通に不審者扱いされてもおかしくないですよ!マルオさん!

 

 それからもう一つの方。『零奈が亡くなるまで、マルオは四葉を除いて五つ子との会話を一度もしたことがない』という事ですが、ここから二つの疑問が浮かびました。『零奈が亡くなった時は結婚をしていなかった?』というのと『江端さんとの接点はどこから?』という疑問です。

 

 前者に関してもう僕自身が様々な人の考察を見てしまっているので自分の言葉で言うことはほぼできないのですが、それでも自分の考えを言うなら『既に入籍はしているが、まだ姉妹に結婚する事は伝えていなかった』という考察に賛成の意を表明しますね。

 

江端さんについて 

 ということで後者の問い『江端さんとの接点はどこから?』について少し書いていきますか。

 

 49話『7つのさよなら⑪』で、五つ子が風太郎のためにマンションでの贅沢な暮らしを放棄して引っ越しを決意するシーンがあるじゃないですか。「江端さん、協力して」の部分。あそこで、おそらく江端さんの回想?として『江端さんが車を運転している中、まだ見た目が全く変わってない頃の五つ子がすやすや眠ってる場面』が描写されていたんですよ。 

f:id:azumaou:20190610182506p:plain

まだ見た目が変わっていない頃

 でもこれって、一体いつの場面なんだろうか?

 

 四葉と五月の見た目が変わっていないという事は零奈がまだ存命している頃=マルオに引き取られていない頃=マルオと話したことがない頃(四葉は時期による)です。それなのに江端さんが運転している車に五つ子が乗って、すやすやと眠っている。なんだこれ。

 

 江端さんは「元は学校の先生」だったという話も出ていたので、マルオに引き取られる前から先生と生徒の関係で既に面識があり、何らかの件で江端さんが五つ子を家まで送り届けてた事が一度くらいはあったのかも、と想像することはできます。

 

 一応これも一つの答えではあると思っていますが、そうなった場合って「江端さん」と呼ばずに「江端先生」ってつい呼んでしまう子も一人くらいはいてもおかしくないんじゃないかな、と思ってるんですよね。今現在は先生ではありませんが、昔から人の呼び名に関するクセというものは中々に抜け出せないものだと思ってますから。

f:id:azumaou:20190609224344p:plain

別に江端さんの生徒ってわけでもなさそう?

 それからもう一つの可能性について。前回の記事で述べた『マルオが京都に来た時、実は零奈も同行していて、翌日USJに連れて行ったのではないか?』という考察を更に発展させた形になるものなんですけど、『マルオと零奈が京都に来る際、江端さんに運転を命じた。そして、USJまで江端さんの運転で連れて行き、帰りも遊び疲れた五つ子を旅館(or家)まで送り届けた』という可能性も考えられました。

 

 ただしこの場合、言うまでもなく例の場面で「マルオと零奈おらんやんけ!」となるのが問題点になるので、その答えが見つからない限りはありえないかなあ。

 

 そこでもう1つ考えたのが、「予防接種の帰りに送ってもらった」という可能性です。

 

 正直過去の五つ子達とマルオ達の所在地がわからないのでハッキリとは言えないんですが、接点を持つとしたらこれしかないのかなって。現在の五つ子は、毎年秋にマルオの病院に予防接種に行っているそうです。零奈とマルオの関係も考えると、マルオに引き取られる頃よりもずっと前から予防接種に行っている可能性もあるのかなと。予防接種をした後で五つ子を家に送る程度ならマルオの送迎にも影響はないだろうしね。

 

 「零奈の付き添いはなかったのか?」という疑問はありますが、地元であればそこまで大きな問題でもない気がするから無視しても大丈夫かも。

私とある男子

 そういえば、サブタイトルが変わりましたね。『私と姉妹②』と思いきや、『私とある男子①』です。

 

 前回の記事でこの『私』がその内五月に変わるのではないか?と思っていたんですけど、今回のシリーズの場合は一体なんですかね。前半は確かに『四葉風太郎』の物語だから『私』『ある男子』も分かるんですけど、でも風太郎がこの先五つ子と出会うのって5年後じゃないですか。

 

 となると『私とある男子』シリーズの続きとしては零奈とマルオの出会いの話……とかになるんでしょうか。ほら、巷で噂の上中下トリオです。57話『最後の試験が五月の場合』で下田さんが零奈の話をしたときに三人組で描かれていたじゃないですか。それが杉勇也・野マルオ・田さんの三人で上中下トリオなのかもしれない考察が結構見られましたよね。

f:id:azumaou:20190610184917p:plain

上中下トリオ(仮)

 それを裏付けるのが、前回で零奈がマルオを見て言った「ファンらしいです」という言葉。こうなると、零奈とマルオは教師と生徒の関係だった説は濃厚な気がしてます。そんなマルオと零奈が、今の仲睦まじい関係になるまでにどんな物語があったのか、これから描写されていくのではないでしょうか。

 

 ただまあ、次はきっと『私と姉妹②』でしょう。四葉「私たちはもう一緒ではいられない」というモノローグで締められてますし。とはいえ、一体どこまで話が進むんでしょう……。今回まさか零奈が亡くなる場面まで一気に話が進むとはこれっぽっちも思っていなかったんですよね。

 

 案外次の回も話が超加速して、1話で四葉風太郎に「うーえすーぎさーん!」って呼び続けるシーンで終わることもありえそうな気がしてきました。さてどうなることやら。

 

 うーん、色々と気になるところはありますが、続きは次回!今回はこの辺で終わろうと思います。

 

 ご拝読ありがとうございました。

 

*本記事で掲載している画像は©春場ねぎ・講談社/「五等分の花嫁」より引用しています。