五等分の花嫁:107話感想 さまよえる翠の弾丸
107話を読了しました。愛とスリルとサスペンスに満ち溢れた『最後の祭り編』も折り返し地点から少し進んで第7セクションへとやってきました。今回からは4人目の姉妹と言うことで、四女の四葉を主要視点者とした学園祭の風景が描かれていくことになります。
三人の姉と違って風太郎に明確な好意を抱いてるにも関わらず、自分の気持ちに蓋をし続けてしまう四葉。一花・二乃・三玖が学園祭の中で確かな想いを持って風太郎へ猛攻を決めていったので、四葉もそれに負けじと風太郎に狙いを定めてをアプローチショットを決めてほしいですね。アプローチと言わずホールインワンになっても一向に構わんのだがな!
思い返せば学園祭編の始まりである96話『進み続ける日常』、その回の中心にいたのは四葉でした。あの時「1ミリも悔いの残らない学園祭にしましょう!」と言った四葉の祭りでの行動は果たしてどのようなものだったのか?順に追っていきましょう。
最終日の四葉
さて、『最後の祭り編』その①恒例の気になる扉絵ですが、四葉は教室やその周辺ではなくまさかの屋外にいる事がわかりました。扉絵右下がうっすらと明るくなっており、近くの生徒に光が反射していること。そして空中に漂う光のカケラがある事から、今の四葉はキャンプファイヤーのすぐ近くに立っている事が分かります。
周囲の生徒達が笑顔になっている中、真剣な眼差しでキャンプファイヤーの方を見やる四葉ですが、果たしてその視線の先にあるものとは一体……。
そして何より気になるのは、なぜ四葉が後夜祭終了時に外にいたのか?という点ですね。学級委員長としての仕事のために外にいるのか、そしてこの後教室かどこかの部屋に行くつもりなのか、そもそも四葉は風太郎に呼ばれていないのか……展開を読むのが実に難しいところです。
(ちなみに仮に風太郎が四葉を選んだ場合の話をするのですが、学園祭初日の一花と同じで四人に選ばない事を告げた後で「入ってくれ」と言うパターンもあるのかな?と思いました。)
それからもう一つ頭の片隅に覚えておきたい話なのですが、姉三人は後夜祭終了時にはキャンプファイヤーの近くにいませんでした。つまり一花・二乃・三玖は後夜祭に全く参加していない可能性があるのではないでしょうか。それと比べた場合、四葉は学級委員長としての立場もあるでしょうが『明確に後夜祭に参加している』という見方ができます。
また、後夜祭と言えば一花が「カップル成立の多い学園祭の中でも、特に三日目の後夜祭がすごい」と言っていましたね。もしかしたら後夜祭の途中で四葉に何かが起こったのでは?と考える事もできます。
もちろん姉三人の方も途中までは後夜祭に参加し、途中で抜けてそれぞれの場所に立っていた事も十二分に考えられます。はーわっかんね。
という事で二乃回で割とどうでもよさげにやった『四葉は教室の後ろ側にいる』という扉絵予想は外れでしたね。残念!でも僕はまだ五月が自分の机に座っている可能を諦めませんよ!
初日の四葉
初日の四葉はまさに獅子奮迅の大活躍と言った所でした。表舞台で大活躍していたのはオープニングアクトで代わりにダンスをすることになった二乃ですが、四葉は学園祭の裏方として様々な出し物の手伝いをするべくあちらこちらに奔走します。
お化け屋敷とから揚げの手伝いもさることながら、何と言っても演劇で悪の女王エメラルドを最後まで演じ切った四葉が素晴らしかったですね。風太郎が『大根』と言っていたのは何だったのかと言わんばかりの演技力でした。
それから学園祭前に依頼をしていたクラスメイト達(バンドの三人組・親戚に招待状を送ろうとしていた子・被服部の人たち)が楽しそうに過ごしている様子も描かれます。
いいですよね、こういうの。自分が親身になって手伝った結果、皆を笑顔にさせることができて、皆が笑顔になってくれたから、自分も手伝ってよかったと心の底から実感できた。見てくださいよ、四葉のこの嬉しそうな表情。見ているこちらもほっこりするものを感じませんか?実際バンドとかを見たのかは不明だけど
それから集合時間前に風太郎と合流する場面。体力に限界を迎えた風太郎を心配して手伝う四葉に彼が投げかけた「ありがとな」という言葉。四葉は「持ちつ持たれつですよ」とすぐに返すものの、その言葉を風太郎から聞けただけで自分の頑張り全てが認められたような気分になります。
思い返せば四葉は『誰かに必要とされる人間」になろうとしていました。最初は母親のために、(この時は少々歪んでしまってしまいましたが)自分のため、姉妹のため、そして風太郎のため。
そしてそれは風太郎の場合も同じです。『誰かに必要とされる人間』になるため必死に勉強をし続けた結果、今の五つ子達から文字通り『必要とされる人間』になっていきました。風太郎本人としてはまだまだ進行形ではあると思いますが。
今までの思い出を全て覚えていて尚且つ理解している四葉だからこそ、この風太郎の感謝には何にも代え難い格別の喜びがあるんだろうなぁと、しみじみと思いました。
そしてその感情は当然恋愛感情にも繋がっていくわけですね。こんな風に過ごせるのもあと二日間しかありませんが、もしも最後に風太郎が選ぶのが自分であってくれれば……と思う四葉の胸中はいかがなものだったでしょうね。
二日目朝~昼の四葉
全てが順調だった初日の終わり際、『たこ焼きの屋台からボヤ騒ぎが発生した』という思いがけない一報が四葉の耳に届きました。
安全点検の時にバッチリだと思っていた場所で起こった想定外の事故。周辺の屋台や人に被害が出ることなくボヤ騒ぎで済んだ事は不幸中の幸いと言えるでしょうが、たこ焼き屋は営業停止処分を言い渡されてしまいます。
点検係であった四葉には『紙片が片付くのを最後まで確認しなかった(と思われる)』という事から責任が0だとは言えません。しかし、だからと言ってここで四葉を責めるべきではないのは読者の皆さんも分かっているでしょう。一番問題なのは『紙片を片付けてください』という指示に従わず紙片をずっと放置していたどころか、四葉ですら知りえなかった高火力に改造したコンロを持ち出してきた男子達ですから。営業停止処分を言い渡されてしまったのも学校側からしたら適切な処罰となります。
ですが四葉は『集合時間に確実に間に合うよう意識してしまったばかりに安全点検を怠ってしまった』と考え、強い自責の念を感じてしまいました。『悔いのない学園祭』を目指して準備期間も絶えず東奔西走してきたはずなのに、ここぞという時に自身の落ち度を認識してしまう四葉の無念さはもはや計り知れない領域にある事でしょう。
そして二日目。初日の不手際を取り返そうとしたのか、はたまた自身の言葉通り眠れなくなってしまったのかは分かりませんが、開場の3時間前から学校に行って仕事を請け負っていました。風太郎の二日目の仕事がなかったのは四葉が全て持っていったからですね。
そんな所から始まった学園祭二日目ですが、三玖が見てもわかるくらい四葉の顔に覇気がありませんでした。
そうなるのも当たり前ですよね。風太郎の告白にたこ焼き屋のボヤ騒ぎ、そして二日目には竹林襲来など、立て続けに四葉にとって衝撃的な事が起こってしまって心に平静を保っていられなくなったのですから。
さらには睡眠時間も足りず、ロクに初日で失った体力の回復ができなかったのもあるでしょう。何もかもが四葉の身体と心を蝕んでいきます。
しかしそれでも悔しがる前田達の姿、そして挑発的な竹林の姿を見て四葉は懸命に学校内を駆け回ります。一体それは果たして何のためでしょうか?
初日のように学校にいる皆の笑顔が見たいから?
または初日の手落ちを取り戻したいから?
それとも風太郎への恋心を強く戒めるためだから?
分かっています。自分の中に『本当は上杉さんに選ばれたい』という強い想いがある事を。
それでも彼女は仕事を求めました。
分かっています。自分の中にも『上杉さんと一緒に学園祭を楽しく見て回りたい』という願望がある事を。
それでも彼女は仕事を探します。
分かっています。本当は『誰よりも、自分の方が上杉さんの事が大好きなんだ』と声を大にして叫びたい気持ちがあることを。
それでも彼女は仕事を受け続けます。風太郎の特別でありたいという気持ちが強くなればなるほど、風太郎の特別になってはいけないという自制心が大きくなって自身の気持ちに蓋をしてしまうから。
次々と思い起こされる姉妹達の言葉。それらを振り切って忘れようとただガムシャラに働き続ける四葉でしたが、ついに心身共に疲弊してしまいました。もはや『自分は今、誰のために何をやっているのか?』そんな事を考える余裕もなかったのでしょう。右に左にふらついてしまい、まっすぐに歩くことのできない四葉の姿は見ていて心が痛むものでした。
そしてそんなフラフラな状態の四葉の前に、竹林が突然姿を現します。「風太郎のお友達さんですよね?」という言葉と共に。
やはり、というべきなのでしょうか。竹林は五つ子の事を間違いなく知っている様子でした。自分としては「一花と同じ女優仲間だから知ってるのかな?」とも思っているのですが、果たして果たして……と言ったところですね。
そして今回学園祭にやってきた目的に関しても全容が不明なままです。風太郎がどんな様子かを見る事ももちろん目的の一つではあるでしょうが、五つ子への反応を見る限りどうにもそれだけでは終わらないというのは読者の皆さんも見てて思うのでしょうが……。
ちなみに自分の考えとしては100話で『四葉と五月の本音を引き出すために一花がお願いした説』を持ち出し、101話ではそれを否定して新たに『風太郎が誰かを選ぶきっかけを作ってもらうため一花がお願いした説』を考えました。
そして今さら考えたことなんですけど、もしかしたら竹林は一花のお願いとは別に『独自で五つ子の本音を引き出そうとしていた可能性』も実はあるのかもしれませんね。
100話で四葉は竹林に向かって声を出しました。途中で五月の声にかき消されてしまいますが、竹林には実はこの声が聞こえていた可能性もあるのかもしれませんよね。
そしてこの声を聞いた竹林が四葉の元に赴いて、「私の方が上杉さんのこと、なに?」と四葉の言おうとしていた事が何だったのかを聞いてくる展開などもあるような、ないような……。いずれにしても、竹林は四葉の持つ恋愛感情に強い影響を及ぼしてくれる人物になってくれるのではないかと。竹林の感じが悪いと言えば感じが悪いけど、まあ初期の二乃もそんなんだったしいいっしょ!
次回で二人の会話が出てくる事を期待します。
二日目夜の四葉
二人が邂逅を果たした次の瞬間、場面が一気に転換。四葉が病室で目を覚ましました。
一花回からずっと気になっていた『倒れた姉妹』の正体は四葉でした。自分の予想としては最初は102話で「四葉がオーバーワークで倒れた可能性が高いな」と思っていたものの、104話で「学園祭の途中で倒れたなら二乃に連絡が来てマルオと何か話すはず。だから過労の可能性は極めて低いので、五月が倒れたはず」と方向転換したのですが、完全にやらかしてしまいましたね。まさか二乃がその報せを受け取っていなかったとは……予想できませんでした。
二乃から余裕を持ってやれなかった事を注意されつつ学校へと戻ろうとする四葉でしたが、二乃が「もう夜よ、二日目はすでに終わってるわ」と四葉に告げられる場面で今回は終わりです。
正直な感想としては「三玖以上にこの後どうすればいいんだ……?」と言ったところです。三玖の場合は自分がミスをしてしまったわけではなく、しかも「初日の夜から行動してくれるのかも?」という希望的観測もあっていろいろと想像の余地はありました。だけど四葉の場合は四葉自身が頑張りすぎたために二日目をフイにしてしまった部分をどう埋め合わせしていくのかが想像し難いです。
今まで『最後の祭り②』で『それぞれが抱えていた心の問題が解決し、その後に風太郎にキスをする』という流れを三者連続でやってきたじゃないですか。だから四葉の場合もその流れに沿って話を展開させていくものものだとは思うのですが、中々に突破口が見えてきません。
特に四葉の数あるお手伝いの中でも最重要だった『演劇部の公演』に参加できなかった点。これがどのような形で解決していくのかがポイントになっていくのではないでしょうか?
それらの事を含めて、以下、気になった事を述べていきます。
気になる事
①演劇は誰かが代わりに出た?
一番のポイントはズバリここでしょうね。二日目の公演に出演できなかった四葉の代わりを誰が果たしたのか。それとも、代役が見つからずに演劇そのものが中止になってしまったのでしょうか?
代役として出られるのは一花・三玖・五月の三人です。二乃は学校にいる間に四葉が倒れて病院にいることを聞いていなかったので除外されます。
有力なのは一花でしょう。話の途中で四葉が一花から演劇の指導を受けていると思われる発言をしていたので、一花が演劇の内容を知ってバトンタッチした可能性は十分考えられます。
ただし一花が代役をこなす場合、考えるべき案件が二つあります。まず、一花はそもそも学園祭二日目はお仕事の最中だったということ。そもそも「妹が倒れた」と聞いて仕事場を離れるなら演劇そっちのけでまず病院に行くのが筋であり、四葉から演劇の代役をお願いされない限りは演劇部の公演に助っ人で参加することはしないでしょう。
……とはいったものの、こちらはそこまで問題ありません。四葉が演劇に出ることを知っているであろう一花が職場に「代役で出ていってもいいですか?」と聞いてOKをもらえば問題ありませんから。それに撮影所の方も一花が不在の間は一花が出演しないシーンを撮影していれば大丈夫でしょう。
問題なのは二つ目。102話で社長から「妹さんが倒れたそうだ」と聞いたのが仕事終わり=夕方であり、その時に倒れたのが五月であるという事。
要は昼に連絡を受けて演劇に参加してきた場合、仕事終わりのタイミングで社長から聞いた連絡は何だったのか?という話です。四葉は昼に連絡をもらっているから当然違いますので、消去法的に五月が夕方に倒れたことになってしまいます。
結論としては、一花が代役で公演に出る場合は『昼に四葉が倒れ、夕方に五月が倒れた』という事になります。なんだかとんでもないことになってきますが、五月は五月で倒れる根拠もそれなりにある(寝不足or実父ショック)ので、二人が時間差で倒れるのは普通にあり得ることでしょう。
それから、四葉の代役として三玖も候補に入ります。簡単に根拠を挙げるなら『風太郎が水族館デートで「任せたぞ」と言っていた内容が四葉の演劇の件である可能性がある事』『三玖の二日目の描写が少ない事』『三玖は四葉の異変に気付いた可能性がある事』の3つですね。
あとはあれですね。竹林女優説がアタリなら竹林が即興で参加する可能性も実はあったりするのではないでしょうか?といったところです。ないか。
②病院での出来事
夜になって初めて四葉が目を覚ました事、そして前の項で四葉だけでなく五月も倒れている可能性を見出してしまった事などから、いつ何があったのかを正確に把握するのが非常に困難です。
四葉が目を覚ました時、二乃が傍にいましたが風太郎の姿はどこにもありませんでした。また、一花が病室に顔を出した時も二乃と風太郎は病室の中に入ろうともしませんでした。もしかして風太郎は目を覚ました四葉と話をしないまま二乃と別れ、一花と一緒に外に出歩いたのでしょうか?
う-ん、謎ですね。風太郎は四葉が病院にいる事を知って二乃と一緒に来たのですから、そのまま四葉と会話せずに終わってしまうのは矛盾しているような気もします。
⇒風太郎が戻って来て3人で会話をした。
⇒二乃と風太郎は一度退室し、どこかで何かをした。
⇒戻ってきた時に一花と合流した。
こういう流れになるのでしょうか?四葉が目を覚ました時の風太郎の行動が不明ですし、実は3人での会話の最中に二乃が退室して風太郎と四葉の二人きりで何かの会話がある可能性なども実はあったりするのかもしれません。
いや、ここに五月まで絡んできたらマジでややこしいことになりますね……ここいらで考えるのはやめておきましょう。
まとめ
先の見えない展開で締めくくられているので、とにもかくにも四葉が救われてほしい。この一言に尽きます。ただしここまで背負い込んできたものが大きすぎるため、たった一話で全てを解決してするまでに至れるのか?というのも疑問ではあります。
演劇部の手伝いは?竹林との会話の内容は?風太郎への恋愛感情をオープンにできるのか?風太郎は京都の子の件で決着を付けることができるのか?そして二人はキスをするのか……?
色々と未解決な問題を抱えたまま次回を迎える事になる『最後の祭り編』四葉パート。果たしてその終着点やいかに、といった感じで今回はこれで終わろうと思います。
ご拝読ありがとうございました。
*本記事で掲載している画像は©春場ねぎ・講談社/「五等分の花嫁」より引用しています。