五等分の花嫁:83話『シスターズウォー 六回戦』感想 絶望に溢れた中野一花が見せた『希望の萌し』
感想書けねえ。
初っ端から何言ってるんだと思うかもしれませんが、これが一度目に読み終わった時の感想でした。いろんな事がわかって、いろんなことが起こって最後の最後にあれですよ。正直思考が止まって「え?」ってなりました。
ここ2か月間、ずっと我々読者の間で最大の問題となっていた一花の変装事件。これがどのように解決されるのかを気にしながら読んできた方も多いでしょう。僕もです。
2か月間ですか。結構長かったですね。当時はピアスがあるとかとかタイツ履いてないとかで見破れるとか、あのあと図書館で三玖に会えばすぐバレるとかの予想があって、そんな長くは続かないだろうと思っていました。
それが、誕生日プレゼントを抜け駆けで渡そうとする・五月の落とした写真を拾って密かに画策する・班決めで四葉とフータローと一緒に組もうと強引に提案する・三玖の動きを封じるために再度三玖に変装をし、嘘吐きを演じ続ける・二乃の涙ながらの本音をぶつけられてもなお、嘘を嘘のままで終わらせるべく自分の戦いを貫き通す……
本当に、この2か月間の一花はやりたい放題を絵に描いたような子でした。でも、それももう終わりです。事態を悟ったフータローが一花の戦いに引導を渡しました。
全てが終わってしまった一花の選択とは……。
変装を見破るフータロー
一花と通っている道を見て過去を思い出し、小学生の頃の思い出話をするフータロー。前に五月が危惧していましたが、フータローが零奈と過ごした1日は今でも思い出せるくらいにとても楽しい、大切な思い出でした。
それを聞いた一花は口元に笑みを作ります。ここで零奈が一花であるとかないとかは全然関係なくて、とにかくその大切な思い出を一緒に過ごしたのは実は自分なんだと明かしたらフータローが自分を見てくれる、より意識をしてくれるに違いないと、そう思ったからですよね。
だけど一花の目論見は大きく外されることになります。「今のフータロー」にとって、あの時の思い出が大切だったかどうか、その相手が誰であったのかはこの際関係ありませんでした。彼の意識はこの自分の思い出話を聞いている目の前の相手が一体誰なのか、その一点にありました。
そして三玖の正体を一花だと見破りました。やっぱりまあ、わかってたんですね。勘とか言いつつもしっかり思考を張り巡らせて正解までたどり着いていました。
ただこの場面で一番特筆すべきなのは、フータローがもう「愛があれば見分けられる」という五つ子の見分け方を完全に放棄してる点でしょう。『スクランブルエッグ』の時までは皆の顔を見分けようと必死だったのに対して、今のフータローはそのことを諦めている……というよりもうんざりしていますね。
まあそれも当然と言えば当然なわけで。家族旅行最終日に五月の姿をした誰かにキスをされて困惑し、自分に好意を抱いているハズの三玖に応援すると言われて混乱し、挙句の果てに一度自分の元から去っていった零奈が再び姿を現しましたからね。「君に私がわかるかな?」なんて問いかけまでして。
そりゃ「もうたくさんだ」って言いたくなります。「もうめんどくせぇ」とか言いたくなります。どうして一々そんなことで自分の五つ子達への愛が試されなくてはならないのかと、フータローも思うようになってきたのではないでしょうか。
それに、愛がなくたって今回のように状況的に見て可能性を絞れます。それに愛があろうがなかろうが、変装を見破るのに問いかけも思考も直感も不必要です。
変装を見破りたいなら、その変装を文字通り引っぺがせばいいだけのこと。変装を解いちゃいけないなんてルールはないし、あったとしてもそれは五つ子達が勝手に課してるだけだからね。
「この手がどんなに紅く染まろうと血は洗い流せる」と同じ理論ですね。違うか。
ちょっと話が脱線するんですけど、スクランブルエッグでお爺さんが最後に言ってたセリフあるじゃないですか。「孫たちに伝えてくれ 自分らしくあれと」と「五人の顔くらい見分けられるようになっているんだな」って
これって当時は別々のものとして考えてきてたんですけど、今改めて考えるとイコールでそのまま普通に繋げられるな、と思い直しました。5人の顔を愛で見分けられるようになるんじゃなくて、5人が自分らしくなった結果として見分けがつくようになれればいいんだと。
……というようなことを一花バレのシーンで思ってました。
【追記1】放棄したって言ったけど、いつかはまた愛で見分けなければならない日が来るとは思ってます。結婚というゴールが待っている作品で、変装を見分けるのに愛など不要だというのはさすがに未来の花嫁にとってもその姉妹にとってもショックですからね。ただ、今しばらくの間だけは愛で見分けられる必要はないだろうなと、そういう解釈でお願いします。
完全に嘘がバレた一花は自分の身を守ろうと必死に言葉を振り絞って伝えますが、フータローは無視。偽三玖の件も完全な決め打ちで一花に問い詰めました。
もう、見てて痛々しいとしか言いようがないです。自業自得だとか、因果応報だとか色々な言葉が思い浮かびますが、正直哀れ以上の何でもありません。
ここらへんは見てて心が痛くなりました。一花が絆を壊してまで他の姉妹を蹴落とそうとしたことはもちろん悪いことだし、擁護できるものではないです。だけどそれは全てフータローに対する好きという気持ちから生まれたものであって、姉妹を蹴落としたいから蹴落としてるわけではないわけで。
そして追い詰められた一花は最後にして最大の武器を使い……いや、ここまで来ると『縋る』が正しいでしょう。
もうやめてくれ、と思わずにはいられませんでした。自分の中では5年前に会ったのは五月だと予想してるのもあって、この嘘とこの表情はより一層キツかった。
まあ今までね、一花の嘘に対して結構理解も納得もしてきましたよ。一度ついた嘘を守り抜くために更に嘘を積み重ねてしまうその姿は実に人間らしいと、そう思っている自分がいます。人間は唯一嘘をつけられる生き物ですからね。
ただなー、ただなー!何て言えばいいんだろうねこの気持ち!
(言葉にできなかったので強引に話を進める事に)
三玖になり変わって応援するという嘘を吐かれたことに対して静かな怒りを一花に向けているフータローですが、さすがに「5年前」というワードには反応せざるを得ないようでした。
そこでお守りの話を口に出した結果、一花は咄嗟に言ってしまいました。「今でも持っている」と。
起こっている事実と認識に若干のすれ違いが発生している状態ではありますが、フータローの「一花の言っていることは嘘だ」という認識と一花の「嘘を吐いている」という認識が奇跡的に合致してしまっています。
だから、「嘘なんだな」というフータローの確信を持った言葉に一花は何も言い返すことができなくなりました。そして「今はお前を信じられない」 という最も聞きたくなかった言葉を告げられました。
自分の戦いを貫いた結果、フータローとの信頼関係までも崩れてしまった一花。測り知ることのできないくらいの悲しみが彼女を覆いつくします。
三玖の一花への「ごめん」
場面が変わってホテルの一室。外に出ていたために大雨に降られてずぶ濡れになった一花・四葉・五月と、外に出なかったため濡れずに済んだ二乃・三玖。
三玖に言うことあるんじゃないの?と二乃に言われ、三玖と向かい合う一花。しかし一花は何も言えないでいる。一方で、三玖は一花に責めの言葉が出てくるばかりか、逆にごめんと謝罪をしました。
正直、前回のごめんに引けをとらないくらいこれは重たい。 三玖が一花の行動をどの程度知っているかはわかりませんが、少なくとも自分に変装している理由が妨害のためだったということは四葉が言っていたことから理解していると思います。言葉に出した四葉や二乃と同じく、おそらく三玖もそんな一花の姿は見たくなかったことでしょう。しかし、二乃や四葉と違って三玖は謝ることしかできなかった。考えられる理由は以下の二つです。
一つ目は、一番最初に一花に宣戦布告をしたのは三玖でした。それも林間学校最終日のキャンプファイアー前の一幕です。そしてさらに、最後の試験でも一花の前で皆に負けないと言っていました。結果的に二乃と四葉の言葉も受けたために一花は暴走してしまいましたが、一花をあのようにさせてしまったことに責任の一端を感じて謝罪したのでしょう。
二つ目は、今現在三玖は自信を喪失した状態にあります。一花とは恋のライバルの関係にありましたがもう一緒に戦えなくなってしまった、勝負はついていないのに先に脱落してしまったことによる謝罪、ともとれます。
どちらかというと前者かなとは思っていますけどね。三玖は自信を喪失しているとはいえフータローを諦めたくない心はありますし。
一花に起こった心の変化
最終日、コース別の体験学習。5つのコースに分かれてそれぞれ体験をしようというう取り組みがあります。「いやいや、学校でそんなの前もって決めておけよ!」と総ツッコミが入ること間違いなしのカリキュラムですが、マルオがこうなることを想定して2日目の夜に決めるよう学校に強制したということにしておきましょう。いいね?茶道体験の参加者が五月一人になったらどうするんだ!和菓子を全部食べちまうぞ!
そんなことはさておき。
全員がフータローと二人きりになりたいけどこのままだと誰の目的も果たせない。最後は運に任せようという一花からの提案ですが、一花は事前に聞いてしまっているんですね。フータロー達がEコースを選ぶという事を。
当然それを利用しない手はありません。これが最後のチャンスなんだから、最後も今まで通りずる賢く立ち回って同じコースを選ぼう。そう思ってEコースを選びます。しかし最終的に一花が選んだコースはDコースでした。
取り繕ってはいるものの、相当精神的に無理をしているのが見て分かります。そりゃそうですよね。自分が一番フータローと一緒にいたいって思っていて、そんな状態で目の前に絶好のチャンスが訪れていたわけじゃないですか。なのに、一花は今の自分が変わらなければ前に進めないと思って勇気を振り絞って他の姉妹にコースを譲ったんですよ。そのきっかけはコース選択を確定させるときのことでした。
一花がEコースで確定させようとしたその時に、妹達の声が次々とフラッシュバックしました。奇しくも、一花を今の状態にさせた(一花が勝手になったとも言えますが……)3人の妹です。
四葉が一花に本当にしたいことをしてほしいと言っている。二乃が五つ子の絆が大切だから選ばれたのが一花でも祝福したかったと言っている。三玖が孤独で辛い役回りをさせてしまった一花に謝っている。
そんな3人の意思を感じ取った一花は……
……今でも「やっぱこの顔何か企んでんじゃね?」って顔に見えなくもないけど!とにかく、ここで明確な心理の変化があったんだと思いたい。今までの「取られたくないから他人の邪魔をする一花」から、「取られたくないから正々堂々とフータローを取りに行く一花」に変化してくれたのだと。
ちょっとこの顔を疑ってる人に、参考までに武田の画像置いておくぞコラ
さんざん言われてる事だけど、今までの一花の行いは決して許されるものではありません。他の姉妹とフータローから失われてしまった自分への信頼は少しずつ、本当に少しずつ取り戻していくしかないと思います。
それでも、一花がこの選択を自らしたことで「希望の萌し」が見えたように思います。皆の幸せへと繋がっている、果てしなく遠い道のり。その第一歩を踏み出したのは他ならぬ長女の一花だったと、そう信じたい。
だから、次に描かれる物語はやっぱりこの子しかありません。
四回戦の時にこんな感想を書きました。
そして皆が幸せになるために、まずは一花と三玖の問題を解決しなければなりません。フータローを取られたくない一心で姉妹の絆を蔑ろにしてしまった一花と、不幸な巡り合わせにより告白をふいにされて自分の殻に閉じこもってしまった三玖。この二人に心からの笑顔を取り戻すために一体どうするのか。二乃とフータローの動きに注目です。
一花はもう自分で答えを導きだしました。今は一人だとしても、その答えに向かって進み続ければ、いつしか理解を得た四葉や二乃が一花の傍に立っていてくれるはずです。
ですが、三玖は今の状態ではおそらくフータローだけしか解決できないでしょう。前回の感想でも書いたんですけど、「二乃は二乃のやれる事を全てやり遂げた、あと少しを誰か(個人的にフータロー)が背中を押してくれれば復活できる」的なことをね。
どういう励まし方になるのかはわかりませんが、二乃が自分自身の中にあるもの(可愛いという容姿)を認めて肯定したとしたら、フータローは三玖の努力を認めて肯定する感じになりますかね。努力というのは最後の試験の四葉編でのキーワードだったりするのでもう出てこないかな?とチラりと思ってはいますが、最近の三玖のスタンスが努力にあるのでそれが全面的にプッシュされるのかもしれません。
ちなみに三玖とフータローの行く所って太奉映画村ですか。ちょっと本当にあるのか調べてみよ……あ、この「東映太秦映画村」っていうのがそれで、京都のアミューズメントパークですか!しかも色々体験できると!ほうほう!
すげえ、忍者ショーに忍者教室!最近の三玖さんって忍者のコスプレしてたじゃないですか!ねぎ先生、これを見越してこのストーリーとあの三玖さんの忍者コスプレにしたのかな……完全に狙ってますねこれw
何のことかわからないって人は店舗特典イラストで何かしら検索すればわかると思います。僕は電子書籍派なので一生手に取ることはないのですが
ということで次回の更新が楽しみで仕方ないですね!二週間待つのは長いですけど、気長に待っていましょう!
今週の気になったポイント
……その前に、はい、恒例の気になったものを取り上げるコーナーもあったので取り上げます。重要なのは1点だけ。
ちょっと話題にするのを意図的に避けてたんですが、これマジで言ってるの?なあ?前回のツーショットもある意味二人きりと言えば二人きりではあったけど、五月って今の風太郎にどういう感情を持っているんだ……好意なのか?ライクじゃなくてラブなのか?
ということで五月の意図が読めないで困っています。あと、これは何の確信もないただの妄言なんですけど、五月って修学旅行の最後の最後に何かやらかしますよねきっと。フータローが三玖に元気を出してもらって、そこで一花の意図を知って関係修復もそれなりにできて無事に修学旅行おしまい!いつもの恋愛バトルに戻るぜよ!ってそうは問屋が卸さなさそうな雰囲気出してますよね。
前回四葉に「隠し事してる?」って聞かれて焦った後に何の描写もなかったので何があったのかはわかりませんが、四葉にシャワーを譲っているときに「で、では……次に四葉どうぞ……」と少し遠慮してる感じがあるので間違いなく何かあったんだろうなとは思ってます。
だから五月が何かしようとしても四葉がストッパーになってくれるとは思っているんですがね……。まあここはしっかり成り行きを見守りたいと思います。何も起こらなかったなら?その時はその時さ!
【追記2】完全に忘れてました。まだ姉妹に話したくない秘密があったわ!!
これだ。これこそが二人きりになりたい理由なんだ。否定はしませんという妙な言い方になってる理由なんだ。
あースッキリ。ただ、どこまで話すのかが気になるところではある。5年前の子も五月なのか、別の子なのか。別の子だとしたら今写真を持っているのは一花だから、一花に聞くのかな。そしたら一花がこれがチャンスだと思ってもう一回「私だよ」って言うのかな。でも写真を最初に取り上げた五月は誰が映ってるかはわかってるしなあ。
んー。今後の展開の一つにこういうことが起こりそうなことは予想しておきましょう。
あ、あと一花がまだ腹黒の状態になっていて、三玖にEコースを譲ったのも実は作戦の一つなのだとしたら次こそ全力で冒頭に「ごめんなさい」と書き込むかもしれません。頼むぜ一花。
といった感じで今週は終わりたいと思います。ご拝読ありがとうございました。
*本記事で掲載している画像は©春場ねぎ・講談社/「五等分の花嫁」より引用しています。